佐々木:卒業制作は工芸?
やなぎ:そうです。大学院の時、きちんとした素材と技法を使う工芸から逸脱して、布を使いながら、草間彌生さんのような立体作品をやり始めちゃったんです。ああいう多産的で過剰な表現にすごく憧れた時期がありまして、樹脂を塗った布地で部屋を全部埋めて内臓みたいにするというようなことをやっていた。
佐々木:そこからアートっぽくなったんだ。ぼくは草間彌生のように、単位をくり返して、増殖しながら空間を埋めていく作家を編み物派と言っている。女流特有の感性だから。あれ飽きないかなと思う。編み物してまた絵を描いて、煮物を煮てまた絵を描いて。
やなぎ:日常なんですよ。飽きるという概念が無いんです。自分が拡大して世界になっていくということなので、別のことしなければ、とか、次の展開はどうしよう、とかいった強迫観念はないんです。 佐々木:でも、大学を出たらその世界は続かなかった。
やなぎ:アトリエもありませんし、いきなり六畳一間のアパートだけ。そうしたら、精神的に憑き物が落ちたというか、パタッと冷めちゃって。
佐々木:なぜ?
やなぎ:理由は上手く言えないんですが・・匂いとか触感とか、手の痕跡とかへの嫌悪感がすごく高まっちゃったんですね。そういう時に写真とか印刷物などのフラットなものっていいなと思ったんです。
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