高橋美江 絵地図師・散歩屋
窪島誠一郎「ある若い画家への手紙」−信州の二つの美術館から−
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'Round About


第20回 やなぎみわ VS 佐々木 豊
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  佐々木:「エレベーターガール」で全員に制服を着せたのは、女性をマネキンのように、モノ化したかったからですか。
やなぎ:その通りです。モノになる、被写体になる、他人に見られる事だけに依存している存在というのは、私のひとつの究極の憧れの姿です。私の「エレベーターガール」作品はそのシンボルなんですね。おそらく多くの女性が一度は憧れる存在でしょうね。で、グランドマザーのおばあさんたちは、そこから解放された存在。他者に縛られたいけど解放されたい、女心は複雑です。
佐々木:ヘルムート・ニュートンの写真がいい例だけど、縛られた肉体が一番色っぽい。精神の自由がはぎ取られモノとしてそこに投げ出されているからだと思う。あなた自身はモノとして被写体になるという志向はないんですか。
やなぎ:なれるものならとっくになってますよ。ヘルムート・ニュートン、私も好きなんです。
 
   
 
 

  佐々木:ボーボワールは、「女性が相手から『心』を愛してほしいと願うのは、性的な行為の瞬間にはモノになりきってしまうから」と言っている。あなたは相手から「きれい」といわれるのと、「頭がいいね」と言われるのと、どちらがうれしいですか。
やなぎ:それ、選ばないといけませんか。どちらも言われたいですね(笑)どちらの形容詞も「趣きがない」のがいい。どちらかと言われれば、やはり「きれい」でしょうね。『心』やら内面など一切関係なく、あくまで外見。美容整形など中途半端じゃなくて、何の趣きも特徴もない量産型の、端正な全身義体になれる日を夢に見ますね。初めからモノなら、ボーボワール的悩みも解決です。ただその時に「女性」というのがまだ存在するのか、とても興味があります。
佐々木:え、同性に対して?
やなぎ:さっき女心は複雑なんて言いましたけど、実は女性性やら少女性やらというものの存在を疑っているんですね。
佐々木:それ、自分を省みてそう思う?
やなぎ:ええ、そうですね。
佐々木:対談をすると、やっぱりジェンダーの話題に振られることが多いでしょ?
やなぎ:それだけ面白いところなんですけど。
佐々木:それは今日はしないようにと、ぼくは決めてきたんだけど。
やなぎ:解ります。淋しいですけど、そこはもうそれぞれの道を行くということで(笑)。
 
   
 
(対談収録=東京都品川区・原美術館/アート・トップ210号より抜粋) 
 
  

 

やなぎみわ(やなぎみわ)
神戸市生まれ。京都市立芸術大学美術研究科修了。写真やCG、ビデオを駆使しながら、女性をモチーフにしたユニークな作品で国際的な活躍を続けている。1993年より商業施設とエレベーターガールをモチーフにした作品を制作し、数多くの国内外展覧会に参加。2000年より、若い女性が自らの半世紀後の姿を演じる写真作品「マイ・グランドマザーズ」、実際の高齢の女性達が古い記憶の中の祖母について語る、ビデオインスタレーション「グランドドーターズ」などを制作。2004年、グッゲンハイム美術館(ドイツ)をはじめ、国内では丸亀猪熊弦一郎現代美術館(香川)など巡回個展を開催。2005年、原美術館で「無垢な老女と無慈悲な少女の信じられない物語」を開催。
http://www.yanagimiwa.net/

 
  【展覧会予定】
台北現代芸術館(台湾) 2006年6月24日〜9月3日
愛知県美術館「愉しき家」 2006年8月4日〜10月1日
光州ビエンナーレ(韓国) 2006年9月8日〜11月11日
 
  

 

佐々木豊(ささきゆたか)
1935年(昭和10年)名古屋市に生まれ。
愛知県立旭が丘高校美術科、東京芸術大学油画科、同専攻科卒業。1992年、第15回東郷青児賞を受賞。国画会会員、講談社フェーマススクールズアドバイザー。
主な著書に「浮気な女たち」「構図と色彩」「はじめてのクロッキー」、「絵に描けなかった絵の話」・「泥棒美術学校」「画風泥棒」・・そしてこの対談も収録されている待望の最新刊「プロ美術家になる!」が 2008年4月に刊行。(芸術新聞社刊)「佐々木豊画集−悦楽と不安と−」(求龍堂)など多数。