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土屋:僕は久野さんとは親しいと言いながら、今日はあらためて内なる久野さんの画歴を引き出せるのを楽しみにしています。
久野:こちらも、古い友人の土屋さんにギャラリートークのお相手をしていただくのを楽しみにしています。
土屋:学生時代、久野さんの存在というのは、日本画の教室まで伝わってくる、伝説的なところがありました。久野さんは家を勘当のような感じで飛びだしてきたと聞いていますけど、自分で働いて授業料を捻出する苦学生で、曲がったことを許さない、正義漢の塊といったようなところがあった。黒澤明の『七人の侍』に久蔵という宮口精二がやる剣客がでてきますけど、変なことを言うと「寄らば切るぞ」といった近寄りがたいオーラがある人でした。それが個展会場で会ってみますと、夢と絵を信じて生きている代表選手みたいなところがありまして、僕自身も絵に関しては学生なりに一生懸命がんばっているという思いがあったんですが、久野さんに会って、かなわない人が世の中に居るんだなあと感じました。それからしょっちゅう絵の話をするようになって、気が付いたら40年経ちました。一番よかったと思うのは、久野さんとデッサン会を毎週金曜日、10年、20年、続けたことです。久野さんは“形”というものに、執拗なくらいにこだわりがあって、今日も作品を見せてもらいながら、デッサンが凄いなあと思いました。カタチが厳しければ厳しいほど絵が魅力的になるんだ、と、その当時久野さんが言っていたことを思い出します。 |
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