|
久野:ヨーロッパで困った事というのは、次第に所持金がなくなるじゃないですか。ある時期、毎日のように知人へ借金の手紙を書いていたんです。それで土屋さんに「困っている」みたいなことを書いたのかどうか、内容はよく憶えてませんが。土屋さんからある時、5万円送られてきたの。えらく感激してね、こういう人のことを真の友達っていうんだろうなって(笑)。いまだ忘れませんよ。お金という単なる金銭的なことじゃなくて(笑)、困っている時に助けてくれる人だと。それにしても美術館、教会などたくさん観ましたね。現代の美術もずっと観ていました。画廊も超一流の画廊を。現代美術と具象系の美術、先端のものも観ていました。で、先端と、古典古代という両極を観ていて、そこで気付いたのは、古いものの造形に、より新鮮な新しさを感じたのです。古代のエジプト、メソポタミア、ギリシャ、エトルリアの美術、中世から16世紀までのイタリア美術、15・16世紀のフランドル絵画及び北方絵画など、いずれもとうてい現代では及ばないであろう豊かで厳しい造形力。いま科学文明が発達してますけど、芸術の上というのは進歩がないと、確信をもったわけね。そういう意味で芸術と人間のあり方について考えさせられました。 |
|