|
安達:こんな真面目に対談するのなんて初めてだから緊張してしまいますけど、金井さんは実際にお会いする前からずっと気になる作家だったんです。お互い「安井賞」で常連だったでしょう?この人が(「安井賞」を)とるんじゃないかなっていつもひやひやしていました。もちろんそれだけではないですが。
金井:ははは。1985年位かな。独立展に出し始めて、まだ間もない頃ですね。銀座に交殉社ビルがありますよね。その中に入っていた画廊でグループ展や、個展をぼちぼちやっていたんじゃないかな。
安達:話が一旦飛びますけど、日本の絵画について考えると、明治までは面と線での表現。明治以降は日本人がヨーロッパに留学して持ち帰った伝統的な油彩画の技法が浸透していって遠近法、ぼかし、陰影などの要素が加わった。ここが日本の絵画の一つの節目となってる気がするんですが。絵という二次元の世界の中で三次元的空間を構築することはどちらかというと即物的ですけど、明治以前の面と線での表現には見るものが頭の中で三次元の世界を再構成するというプロセスが発生するでしょう?絵画に限らずそこは大きな違いだと思んですよ。造形を捉える上での間口の広さというか、見る側が自分のリアリティで空間をつくる、金井さんの絵にもそういう所があると思うんです。情緒的なものが除かれている点も含め、僕はすごくいいと思う。
金井:昔の絵ってシンプルで、からっとしていますよね。明治以前の日本の絵画は「野太い」んですよ。野太い絵を描きたいとは思っています。僕の方も安達さんのことはお会いする前から作品を知っていて。僕にとって安達さんの絵の魅力は、ずばり僕に無いものを持っているところ。即興的に描いたものをクラシックな形に持ってくる力はうらやましいなって思っていました。
安達:そんな風に言われると…そんなこともないんだけど。
金井:大学で何も見ないで描く訓練したって言ってたじゃない。
安達:そうそう。それでまあお互いに気になる存在だったと。 |
|