高橋美江 絵地図師・散歩屋
窪島誠一郎「ある若い画家への手紙」−信州の二つの美術館から−
もぐら庵の一期一印
金井訓志・安達博文
クラウディア・デモンテ
森田りえ子VS佐々木豊
川邉耕一
増田常徳VS佐々木豊
内山徹
小林孝亘
束芋VS佐々木豊
吉武研司
北川宏人
伊藤雅史VS佐々木豊
岡村桂三郎×河嶋淳司
原崇浩VS佐々木豊
泉谷淑夫
間島秀徳
町田久美VS佐々木豊
園家誠二
諏訪敦×やなぎみわ
中山忠彦VS佐々木豊
森村泰昌
佐野紀満
絹谷幸二VS佐々木豊
平野薫
長沢明
ミヤケマイ
奥村美佳
入江明日香
松永賢
坂本佳子
西村亨
秋元雄史
久野和洋VS土屋禮一
池田学
三瀬夏之介
佐藤俊介
秋山祐徳太子
林アメリー
マコト・フジムラ
深沢軍治
木津文哉
杉浦康益
上條陽子
山口晃vs佐々木豊
山田まほ
中堀慎治


'Round About


第28回 金井訓志×安達博文

※画像はクリックすると拡大画像をひらきます。   
 
安達:でもそうなると自分の絵の模倣になってしまう。
金井:そうだね。僕は展開していきたいっていう気持ちがあるんですよ。どんどん変わっていきたい。だからちっともクオリティがあがらなくて困っちゃうんですよ。ちょっとよくなってきたなと思ったらもう飽きているんだから。
安達:クオリティって技術的なもの?
金井:そうそう。だからもう少し我慢しながらやった方がいいのかなぁなんて思ったりもしています。
安達:技術はやればやる程つくと思う。若い頃は上手い下手とか技術的なことばっかり勉強していましたよね。当たり前だけど、だんだん精神的な部分が肝要になってきている。もちろん両方大事なんですけどね。
金井:ちょっと湿っぽくなってきた?
安達:そうかもしれない。とにかく技術のところだけで安心は出来ないから。でも金井さんは両面から上手く展開していると思いますよ。
 
  金井:そうでしょうか。ありがとうございます。
安達:僕も変わりたいと思ってあれこれ考えてみるんだけど、やっぱりしっくりこない。ちょっと変わったものを描いたこともあったんですが、周りの評価がどうあれ借物みたいに感じちゃって、またすぐ元に戻ってしまいました。5年10年の単位で少しづつ変わって行くのかな僕の場合は。
金井:人それぞれでしょう。じわじわ変わる人もいますから。同じ絵を描いていたって描き続けていくうちに何か変わるでしょう。さっき言っていた自己模倣になってしまうとつまらないじゃないですか。
安達:描いてて自分もつまらなくなるよね。今僕、水彩で絵日記描いてるじゃないですか。ロール水彩紙にね、毎日描いてるんですよまだ。
金井:すごいよね。字はあまり書かないんだっけ?
 
   
 
安達:文字はわずかですね。その日にあったことをさっと描いています。普段はその日の絵しかみてないんですけど、昨年駒ヶ根高原美術館という所で個展をやった時に初めて二年分くらいまとめて見てみたんですよ、ばっと広げてね。そうしたら頭で考えてることって手に伝わってるんですね。広げてみると自分の日々の心情の変化がわかるんですよ。面白くて。やっぱり少しづつ毎日変わっているんですよ。今の話はそれを言いたかったんです。
金井:そうですよね。日記実は僕も書いていました。自分のホームページで毎日書いていましたけど。
安達:全然更新されてないよね(笑)。勝手に忙しいんだろうなと推測しています。
金井:そんなことないけど(笑)。だから安達さんの絵日記の方が有用ですよね、毎日描いているなんてたいしたもんです。
安達:いやいや。こうした(作品での)表現では僕は描きなぐれないけど、水彩はすぐ描けるからバランス取ってるのかもしれません。金井さんもそうじゃない?しっかりつくり込んでいくタイプだと思うんだけど。
金井:そうですね。
安達:独立展の会場で見ていても金井さんの絵ってぱっとすぐ見つけられる。

金井:ふっと思ったんだけど、だんだん新鋭作家って言われなくなってきたね(笑)。
 
 
僕はどうして独立展に出したかっていうと、単純に安く発表出来る場所だと思ったんです。当時知り合いも全然いなかったもので。独立もたくさんスターがいたから、ついでに僕のも見て貰えるかな?なんてね。だからずっと描きたいものを描いてきているんですよ。
安達:それは感じますよ。
金井:できればずっとこういう気持ちでいたい。会員にもなって、団体も大事にしようと思っていますけど。来年は会場も六本木に移転しますし、団体展という場所が刺激を受けることができて、新しい創造が生まれる場であればいいと思っています。
安達:そうですよね。
 
 
二人展の「宿題」
金井:二年前に初めて二人でやる時に何か面白いことをやりたくて、コラボレーションしようって話になりまして。二人で一緒に作品を描いたんですけどそれが結構話題になったんですよね。今回はどうしよかうと考えていたら、じゃあお互いに宿題を出そうかという話になって。ドローイングを送り合って、お互いの解釈で描こうじゃないかと。
安達:まず二年前の話からすると、すごく勉強になったと思います。ていうのは好きな金井さんの絵を僕は会場では見て10秒、いや15秒なんですよ。でも作品を一緒に作るってなるとまじまじ見るでしょう?金井さんの制作にあたるときの気持ちを考えましたし、金井さんの気持ちに近づけたかなと思うんですよ。眼だけじゃなくて手で作品を理解することは大きいです。プロセスも考えるし。今回の二人展は色をつけずに線だけでやろうという話になったんですよね。線だけのエスキースをやりとりしてお互いの切り口で描こうってね。それが今回金井さんのがすごく良くて!完敗です。
金井:全然そんなことないじゃない。僕が出した宿題がマズいって場合もあるから。一緒にやるんだったら、安達さんの世界を少し壊してやっちゃおうって思いまして、だから僕流の構図を送りました。
 
   
   
 
安達:そう、金井さんの構図はいただきです。それでね、前回の二人展の後で金井さんの絵が売れた時に、僕に売っていいかって聞くんですよ(笑)。
金井:いやいやだって半分は安達さんの絵だから。
安達:そんなの僕に断ることないですよ。
金井:こういう場合はどうするんだろうなと思って、一応許可取ったんだけど。まあお金は全部僕のものですけどね(笑)。
安達:僕はもっと高くなってから売るから(笑)。これからもこういう試みはやっていきたいですよね。
金井:面白かったですよね。
安達:勉強になりました。
金井:こちらこそ。
安達:次回はリベンジです。
 
   
   
(2006年12月 ギャラリー・しらみず 美術 二人展会場にて取材)  
  

 

金井訓志(かない さとし)
1951 群馬県生まれ 
1980〜独立展(独立賞,第60回記念賞他)
1991 安井賞展(92、93、94-賞候補-、
1991 95、97 セゾン美術館他)
1992、95 前田寛治大賞展(日本橋高島屋、
1992、95 倉吉博物館)・現代美術選抜展(文化庁)
1993 『加藤アキラ・金井訓志展』(高崎市美術館)
1995 平成6年度文化庁買上優秀美術作品に選ばれる。
1995 『'95油絵大賞展』(東京セントラル美術館/優秀賞)
1997 『第3回 美の予感展』(日本橋高島屋、他)
1997 『第1回 独楽の会』(日本橋高島屋他、〜2001)
2000 『美の世界』ー人のかたち・金井訓志ー(日本テレビ)
2000 『絵は風景』(読売新聞)
2000、01 第22・23回『日本秀作美術展』(日本橋高島
2000、01 屋他)、『現代日本画・洋画新鋭作家展』(日本
2000、01 橋高島屋他)
2002 文化庁派遣芸術家在外研修員としてイタリア・フィ
2002 レンツェに留学
2003 『EVOLUTION 16』(日本橋高島屋他、以後毎年)
2003 デグ アートエクスポ 2003(EXCO 大邸/韓国)
2004、06 『二人展 安達博文・金井訓志』
2004、06 (ギャラリーしらみず 美術)

【個展】
'83 ダーム市立美術館・ベルギー/'92 渋谷西武百貨店
'94〜 ギャラリー椿・東京/'95〜 蔵丘洞画廊・京都
'99 新宿紀伊國屋画廊/'02、'05 高崎高島屋 他

現在:独立美術協会会員、了徳寺大学芸術学部教授
 
  

 

安達博文(あだち ひろふみ)
1952 富山県朝日町に生れる
1977 東京芸術大学卒業
1977 第51回国展出品(以後、毎回)
1979 東京芸術大学大学院油画技法・材料修了
1979 第53回国展 国画賞受賞
1981 文化庁芸術家国内研修員
1988 第5回伊藤廉記念賞展出品 伊藤廉記念賞受賞(大賞)
1989 第32回安井賞展出品(以後'90〜'92、'94〜'97)
1991 文化庁派遣芸術家在外研修員として渡欧
1991 (イタリア・フィレンツェ'92まで)
1994 ガレリア・イル・ポンテ個展(イタリア・フィレンツェ)
1994 第1回「風」まくらざき現代美術選抜展招待出品
1994 (南溟館以後'96)
1996 「安達博文個展」 (日本橋高島屋・なんば高島屋)
1997 第40回安井賞展 特別賞受賞
1998 『DOMANI・明日』展招待出品
1998 (安田火災東郷青児美術館)
1998 日本現代作家作品展招待出品
1998 (上海美術館 中華人民共和国)
1999 現代日本絵画の展望展招待出品
1999 (東京ステーションギャラリー)
1999 安達博文の世界展ー僕の中のぼくー
1999 (池田20世紀美術館)
2000 美の世界−「顔」でつづる日記−安達博文
2000 (日本テレビ制作)
2000 『絵は風景』読売新聞
2000 アート最前線25年作家とともに(池田20世紀美術館)
2002 文化庁在研制度35周年記念「DOMANI・明日」展2002
2002 (安田火災東郷青児美術館)
2003 「安達博文展」
2003 (日本橋高島屋・なんば高島屋・JR名古屋高島屋)
2003 人を描く展||(北海道・神田日勝記念館)
2004 にんげん・いろいろ50の世界
2004 (池田20世紀美術館)
2005 現代の写楽か−安達の眼−「安達博文展」
2005 (駒ヶ根高原美術館)
2005 国画会80周年記念展(メナード美術館、愛知)
2005 安達博文展(ギャラリー美匠)
2004、06 『二人展 安達博文・金井訓志』
2004、06 (ギャラリーしらみず 美術)

現在:国画会会員、富山大学芸術文化学部教授