会田:ぼくはまともな絵描きじゃない、ということをまずは言うべきなんだろうと思って今日ここに来ました。子供の頃も、時を忘れて絵を描くような少年でもなく、漫画家になりたかったとよく言うけれど、絵というよりは、ストーリーがなんとなく好きだった。大学進学でも、勉強は嫌いだけど、東京に行って何か文化的な仕事をやりたい、だけど漫画大学は無いし、とりあえず美術大学に行っておけば、選択肢がいろいろ残るかなあと思った程度。予備校の時は、朝から晩まで油絵の具と格闘してましたが、大学に入ってしまったら、絵筆をほぼ捨てたような状態で、なんちゃってコンセプチャルアートみたいなものにすぐ行っちゃった。こういうベタベタな具象画をやってもいいかなあと思ったのは、大学の四年が過ぎてから。もう一回、ちまちまと絵を描いてみたいなと思って、技法材料研究室へ行くことにした。佐藤一郎先生の教室です。一番カタい、会で言うと白日会とか、ああいう細密画の世界に飛び込んだ。面接の時に、「学部時代の四年間、何にも絵を描かなかったけど、これから二年間はまじめに絵を描きます」って約束しました。
佐々木:それが今になって良かった。
会田:だからぼくが「絵を描く男」というイメージが創られたのは大学院行ってからのことです。
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