高橋美江 絵地図師・散歩屋
窪島誠一郎「ある若い画家への手紙」−信州の二つの美術館から−
もぐら庵の一期一印
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'Round About


第24回 わたなべゆう VS 佐々木 豊
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佐々木:自家製の土の絵の具と言ってもいいんだけど、そこにごろごろ面白い物が転がっているというのがゆうさんの絵。でも、そういうモチーフがアトリエにないのはなぜ?
わたなべ:物を置いて描くということはしないから。物にしばられると画面の中で自由にならないじゃない。この作品なんかも、拾ってきた木を使っているように見えるけど、新しい木を削って造ったものなんだ。自然の物ってそれだけで、完成されて美しい。きれいだから壊せないじゃない。
佐々木:ただ、ナスとか植物とか静物画の感じが強まったんじゃない?
わたなべ:意識してないし、目の前のものをすぐに描くことはないんだ。見ることは見てるんだけどそれを直接描くんじゃなくて、頭の中で一回発酵させて分解して、それから画面の上でつくりあげる。
 
 
コンクールの効力
佐々木:ま、安井賞受賞者として今までメジャーな画廊からお誘いがあったんでしょうけど、なんとなく大通りは歩きたくないのはなぜなの?
わたなべ:若いときは、メジャーでやると売り絵、消耗品として扱われると思っていた。確かに商品なんだけれど、プライドがあるじゃない。変に甘いかもしれないけど。
佐々木:「通俗画家としてではなく、美術史に残る画家になりたい」と言いたかったわけ。
わたなべ:そうじゃなくて、有名になるためにどんな方法でも使おうと戦略でやっていく人と、もう少し欲求のレベルは下かもしれないけど、絶対はずしたくない所は守って、結果として有名にならなくてもしょうがないと思う人といる。ただ、どっちも出発点は絵が描きたいから描いているんだ。
佐々木:ぼくの世代では無所属作家はすぐ消えちゃう危うさがあるんだけど、ゆうさんは、無所属作家で消えないうちの一人だよね。
わたなべ:何故消えるんだろう。だから村上隆みたいな発想が出てくるわけだろうね。海外でブランドを作ってもらって逆輸入するという。
 
   
 
佐々木:それはいびつだと思う。日本で正当に評価しないで、向こうで有名にならなきゃというというのは、恥ずかしいことなんだよ。
わたなべ:堂々と自分の絵を描いてそれを売ることが恥ずかしいと思うような日本の土壌はおかしいと思う。日本でやるのは本当にむずかしいんだよね。個展をやろうと思ったら貸し画廊という手段を使って、お金払って、身内がきて、一回は売れるけど二回目はこない。お金とかリスクが大きいのでそれでくたびれちゃう。
佐々木:だから企画してもらえるようにするにはコンクールしかない。あなたは安井賞というでっかいブランドを手に入れた。
わたなべ:あの受賞で、こんな絵わかんないよと言っていた人にもとりあえず見に来ていただけるようにはなった。それは大きい。貸し画廊を一回も使わずにきたし。
佐々木:安井賞の効果は続いてる?
わたなべ:少しは続いてるんじゃないかな。
佐々木:そうすると、今どうやって食ってるの。
わたなべ:個展は年に3回か4回あるんだけど、その収入で食べてるよ。子供が、霞は食いたくないというけど、とりあえずは生きるだけはなんとかしてるよ。
佐々木:そりゃすごい。だって先生をやってなくて、媚びない絵だけで食ってるなんてのはもうまず見渡していないよ。ゆうさんしか。
 
 
(わたなべゆう氏のアトリエにて収録/アート・トップ211号より抜粋) 
 
  

 

わたなべゆう(わたなべゆう)
1950年山梨県生まれ。86年第4回上野の森美術館絵画大賞展、第16回日本国際美術展出品。88年第17回日本国際美術展佳作賞、第7回上野の森美術館絵画大賞展佳作賞受賞。90年第1回オギサカ大賞展大賞受賞、第8回上野の森美術館絵画大賞展大賞受賞、日本IBM美術奨学大賞受賞。92年第21回現代日本美術展佳作賞受賞。94年第38回安井賞受賞。主に個展で活動。無所属。

【展覧会予定】
○10月6日(金)〜10月21日(土) 江原画廊
 東京都中央区銀座1-9-8 奥野ビル4F
○11月6日(月)〜11月18日(土) 吉井画廊
 東京都中央区銀座8-2-8
 
  

 

佐々木豊(ささきゆたか)
1935年(昭和10年)名古屋市に生まれ。
愛知県立旭が丘高校美術科、東京芸術大学油画科、同専攻科卒業。1992年、第15回東郷青児賞を受賞。国画会会員、講談社フェーマススクールズアドバイザー。
主な著書に「浮気な女たち」「構図と色彩」「はじめてのクロッキー」、「絵に描けなかった絵の話」・「泥棒美術学校」「画風泥棒」・そしてこの対談も収録されている待望の最新刊「プロ美術家になる!」が 2008年4月に刊行。(芸術新聞社刊)「佐々木豊画集−悦楽と不安と−」(求龍堂)など多数。