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中野:長谷川って、展覧会を観るたびに額がおもしろいよね。
長谷川:僕は時間をかけて仕上げた作品をいきなり誰かに託せない性格。額も自分の作品の一部だと思っているし、そのこだわりの結果として額まで手も口も出している。今回の作品では花が光に透けてゆく現象をとどめておきたいと思った。その為に、額で作品をくくってしまうのではなく、画面の中に持ち込んだ光を、できるだけ外に拡散できるような、光に包まれているような額を考案した。壁・建築物に溶け込む一つの要素になってくれれば良いかなという狙いもあったんだ。僕の作品は西洋の古典技法を借りているけれど、それを返上したときに自分の中に確かに在るのは東洋的な感性だと思う。その部分は、この額でうまく演出できたかな。一方で絵というのは枠があって成り立つもので、その枠のなかで何ができるのかという挑戦的な一面もある。その結果、枠でモチーフを限定するような額が生まれた。相反する二つのことを一つの会場でどう共和させるかという観点でミリ単位でデザインして、信頼できる額屋さんに注文して、何度もダメ押しをしながら、これら銀箔仕上げの額が誕生したんです。難産でしたね。
中野:なかば工芸の分野に踏み込んでる感じもあるね。
長谷川:いやぁ、絵しか描けない人間に作れる額には限度があるよ。 |
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