高橋美江 絵地図師・散歩屋
窪島誠一郎「ある若い画家への手紙」−信州の二つの美術館から−
もぐら庵の一期一印
日野之彦
小滝雅道
遠藤彰子VS佐々木豊
長谷川健司・中野亘
松本哲男
やなぎみわVS佐々木豊
清野圭一
Jean Claude WOUTERS ジャン・クロード・ウーターズ
長尾和典VS鷹見明彦
わたなべゆうVS佐々木豊
カジ・ギャスディン・吉武研司
千住博VS佐々木豊
山本容子VS佐々木豊
三瀬夏之介
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マコト・フジムラ
深沢軍治
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山口晃vs佐々木豊
山田まほ
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'Round About


第18回 長谷川健司・中野 亘
 「交差する視線」

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  中野:長谷川って、展覧会を観るたびに額がおもしろいよね。
長谷川:僕は時間をかけて仕上げた作品をいきなり誰かに託せない性格。額も自分の作品の一部だと思っているし、そのこだわりの結果として額まで手も口も出している。今回の作品では花が光に透けてゆく現象をとどめておきたいと思った。その為に、額で作品をくくってしまうのではなく、画面の中に持ち込んだ光を、できるだけ外に拡散できるような、光に包まれているような額を考案した。壁・建築物に溶け込む一つの要素になってくれれば良いかなという狙いもあったんだ。僕の作品は西洋の古典技法を借りているけれど、それを返上したときに自分の中に確かに在るのは東洋的な感性だと思う。その部分は、この額でうまく演出できたかな。一方で絵というのは枠があって成り立つもので、その枠のなかで何ができるのかという挑戦的な一面もある。その結果、枠でモチーフを限定するような額が生まれた。相反する二つのことを一つの会場でどう共和させるかという観点でミリ単位でデザインして、信頼できる額屋さんに注文して、何度もダメ押しをしながら、これら銀箔仕上げの額が誕生したんです。難産でしたね。
中野:なかば工芸の分野に踏み込んでる感じもあるね。
長谷川:いやぁ、絵しか描けない人間に作れる額には限度があるよ。
 
   
   
  長谷川:展示ということでは、中野の今回の作品は吊ってあったり、刺してあるけど。
中野:展示の場合、不特定多数の人が来ますからね、そうするといつも「安全」というのが頭にある。となると当たり前な無難な置き方に傾いてゆく。そこからちょっと解放されたいというのと、もう少し観に来てくれた人に緊張感を味わってもらうというやり方があるんじゃないか。きっかけとしては、吊っちゃったらどうだと長谷川に言われて、最初はぶらさげることばっかり考えていたんだけど、だからといって依然として地球にいるかぎり重力があって、蓑虫状態でぶらぶらとして結局解放されない。それで見せ方として仕掛けだけでは、ちっともおもしろくないと感じて、じゃあ、床に着く部分を一点に絞ったらどうかなと思いついた。吊り降ろした最後の一点で立ってるという状況を設定できたら自分でも、観てくれた人もおもしろいかなと考えたんだ。
長谷川:展示会場にただよう緊張感がおもしろいよね。どうやって作ったか技法的な側面のおもしろさ、どうしてこの展示に至ったかという作家のこだわりにも関心をもって見てくれる人がとても多かった。質問と感心で会場が盛り上がってたね。
中野:今回、展示を行為としてここまで意識したのは、この会場と、隣に長谷川がいたのは影響があったかな。ライティングまでやってもらいましたからね。
長谷川:立体作品をぶらさげたり、立てかけたり緊張感のある展示をしてくれて、たまたまお手伝いで照明係をさせていただいて、あらためて自分は平面作家だということを認識できた気がするよ。
 
   
   
 
長谷川:さて、今後どんな風に作品を展開して行きたい?
中野:最近京都の高台寺のお庭でのインスタレーションの仕事がぽつぽつ来たりして、展覧会場じゃない空間とのコラボレーションもおもしろいなと思っている。展示室じゃ表現しきれない、作品をふくめた空間の、その場に漂う気や明かり、響きなどを取り込んだ表現がもっともっと、できたらいいな、そしていろんな人との出会いをしたいなと思っています。9月には、新潟の妙光寺で個展をします。
長谷川:僕は枠(画面、額、スペース)を設定して、多少ゆらぎながらもこのまま行くんだろうな。僕たち二人は現在形では、交差して接触しているけれど、また少し離れてゆく可能性もある。これからも見つめ合うことはしないんだろうけど、同じ方向に進んでいるという人がここにいるということを、お互い意識しながらマイペースで制作と発表を続けて行けたらいいなと思います。期待しています。
中野:そうね、体力的にはもうチョットだけ無理をしてでも、もっと良い仕事をしましょう。
 
 


 
(2006.4.13 ギャラリー椿にて取材)  
  
  

 

長谷川健司(はせがわけんじ)
1953 新潟市に生まれる
1979 東京芸術大学美術学部油画科専攻卒業
1981 東京芸術大学大学院修了(油画技法材料研究室)
1983-84 ウィーン国立応用美術大学給費留学
1986 東京芸術大学大学院博士後期課程修了
1987-91 同大学非常勤講師
1989- 池袋コミュニティ・カレッジ講師
1989 (「油彩・テンペラ」「隔週油絵1.2.3」)
1996- JALアカデミー講師
1996 (「スケッチ・淡彩」「楽しんで描く銀座工房」)
1999- 東京造形大学非常勤講師
2000- 多摩美術大学非常勤講師

【個展】
1980 遊民の部屋(真和画廊)
1986 遊びの指輪(東京セントラル絵画館)
1988 百夜劇場(シブヤ西武美術画廊)
1993 9月の夜にKsse(内山画廊)
1991 沈黙の花園(シブヤ西武美術画廊)
1992 13の挿話(彩林堂画廊)
1993 イメージの地層(PLATEUSIDE GALLERY)
1994 夢遊病の女たち(日本橋三越)
1995 Windung(ギャラリー青羅)
1998 Evaの饗宴(日本橋三越)
1999 Vivienの肖像(ギャラリー椿)
2001 Grtnerの休日(新生堂・田嶋美術店AOYAMA)
2003 凝固する光(ギャラリーしらみず美術)
2006 透過する花(ギャラリー椿)
 
  

 

中野 亘(なかのわたる)
1953 新潟市に生まれる
1976 関西大学文学部哲学科卒業
1976-85 京焼八代目 高橋道八氏に師事
1978-79 プレ・インカの土器を研究
1978-79 (Peru、Museo“AMANO”)
1985 工房を滋賀県八日市市(現 東近江市)に設立
1989 朝日陶芸展
2000 環琵琶湖造形家会議展(滋賀県立近代美術館)
2002 朝日現代クラフト展
2002 個展(新潟・妙光寺、京都・法然院)
2003 高台寺 方丈前庭(京都)に於いて
2003 「春宵」をテーマにオブジェ制作。
2003 個展(京都・法然院)
2004 個展(京都・法然院)
2005 個展(Brums Verk・Norway)
2005 個展(京都・法然院)
2005 明倫茶会(京都芸術センター)
2006 個展 silent breathing(GT2)