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'Round About


第13回 岡村桂三郎展 〜挿絵「海女の珠とり」〜

※画像はクリックすると拡大画像をひらきます。   
 
 
   
 






●新作の場合は、会場に来て初めて何枚ものパネルを蛇腹につなげるというお話を聞いてびっくりしました。岡村さん本人も、アトリエではなく、会場で初めて作品の全貌を見るということになります。非常に難しい作業のように思えるのですが?

作品のイメージは、基本的には頭にあって、そのメモとしてこれくらいの(編注:写真のサービス版大)下絵は描きます。ただ、メモの通りにやっても絶対うまくいかないので、実際にパネルを前にして、その作品の大きさを考慮に入れて、すぐにイメージをつくり直します。だいたい、すっとイメージが降りてくるような感じでないと苦労します。考えても絶対にできない。すっと「これだ」と思えないとだめです。「これだ」と思えればだいたいうまくいきますし、思えないで始まると、後で地獄が待っています。『肉を喰うライオン』のころ、初期の段階では、描いて、消して描いて、ということをやっていましたが、作品をカットしたり、レリーフ状のものをつくるようになって意識が変わりました。どこかで決定してしまうんです。下地の部分と板地を見せている部分の境も、どこかで決定してやらないと、いつまでたってもできないし、かえってだめになってしまいます。

●一度降りてきたイメージはその後も維持されるのでしょうか?

ほとんどの場合は維持されます。そんなに大変なことではなくて、木炭で線を引いてしまえば決まってしまいます。ただ、鮮度があって、そのイメージが面白いと思っている時に仕上げないとだめです。忘れてしまうと前進も後戻りもできなくなってしまいます。

 
  ●岡村さんの描く生物は、どこか人間以前の根源的な姿をしているように思えます。それを、降りてきたイメージから描き出していくという行為には、あたかも神がかった存在が、無から創造物を創りだしているような姿を思い浮かべます。

実感としては特にありませんが、ただ、絵を描くとはそのようなことなのかなとは思っています。「アート・アクセス」で連載中の「岡村桂三郎のひとりごと」にも書いたことがありますが、例えば、フランスのショーヴェ洞窟を見れば、3万数千年前から、人間が絵を描いています。この行為は、単に見たものを再現しただけではないと思います。何かひとつのものを創りだし、イメージしたものを表していくというようなことでしょう。洞窟のデコボコの中で牛のフォルムや、馬のフォルムがつくられていくというのは、再現性もあるけれど、ある意味では人間の原初的な、呪術的なものを創造しています。絵を描く、画面に刻んでいく、表現を刻んでいく、ということは、新しい、見たことのないものを創っていくということではないでしょうか。だから僕も、いままでいろいろなスタイルの絵を描いてきたけれども、見たことのないようなもの、いままで知らないものをつくってみたいという気持ちはものすごくあります。会場自体も見たこともない会場をつくりたい。結局、全体が最終的にどのようになるのかを自分で見たいんですね。もしかしたら、見せることよりも、自分が感じたいのかもしれません。どのように感じたいとか、こういう場所に来たらどのような気分になるかとか、それを自分で楽しむために作品や空間を勝手につくって、でもそれだけではなくて、人に見せているようにも思えます。

 
  

 

【インフォメーション】
 現在佐藤美術館にて先生の個展が開催されています。お近くにお出かけの際は、 
 ぜひお立ち寄り下さい!
 

 

展覧会名 岡村桂三郎展
〜挿絵「海女の珠とり」と大作で綴る岡村桂三郎の世界〜
会場 佐藤美術館
 東京都新宿区大京町31-10
 tel:03-3358-6021
 http://homepage3.nifty.com/sato-museum/
会期 2006年1月12日(木)〜2月26日(日) *月曜日休館
時間 10:00AM〜5:00PM *金曜日は7:00PMまで

■付帯イベント
○ギャラリーツアー 岡村桂三郎作品を巡る
 日時:2月25日(土)1:00PM〜5:00PM
 内容:佐藤美術館の展覧会とコバヤシ画廊での個展を画家本人の解説の
    もと展覧する
 人数:20名程度 要予約

○ギャラリートーク
 日時:1月15日(日)2:00PM〜4:00PM
 内容:作家と佐藤美術館学芸員によるギャラリートークと作家による
    公開展示
 会場:佐藤美術館3・4階展示室
 人数:60名程度 先着順

○アーティストトーク
 日時:2月3日(金)6:00PM〜7:00PM
 内容:作家によるギャラリートーク
 会場:佐藤美術館3・4階展示室
 人数:60名程度 先着順
 
  

 

■岡村桂三郎プロフィール
1958年生まれ、1988年東京藝術大学博士課程修了。1980年代から「日本画ニューウェーブ」の作家として注目される。1994年五島記念文化財団の研修員として渡米、多くの美術館での個展、グループ展、企画展に参加。東京藝術大学、女子美術大学、武蔵野美術大学講師を経て現在、東北芸術工科大学教授。最近の出品展は琳派展(東京国立近代美術館)東山魁夷記念日経日本画大賞(ニューオータニ美術館)他。タカシマヤ美術賞・芸術選奨文部科学大臣新人賞受賞作家。

→好評連載中の“岡村桂三郎のひとりごと”はこちら!