高橋美江 絵地図師・散歩屋
窪島誠一郎「ある若い画家への手紙」−信州の二つの美術館から−
もぐら庵の一期一印
金井訓志・安達博文
クラウディア・デモンテ
森田りえ子VS佐々木豊
川邉耕一
増田常徳VS佐々木豊
内山徹
小林孝亘
束芋VS佐々木豊
吉武研司
北川宏人
伊藤雅史VS佐々木豊
岡村桂三郎×河嶋淳司
原崇浩VS佐々木豊
泉谷淑夫
間島秀徳
町田久美VS佐々木豊
園家誠二
三瀬夏之介
佐藤俊介
秋山祐徳太子
林アメリー
マコト・フジムラ
深沢軍治
木津文哉
杉浦康益
上條陽子
山口晃vs佐々木豊
山田まほ
中堀慎治


'Round About


第37回 北川宏人

※画像はクリックすると拡大画像をひらきます。   
●あと強化プラスチックの義眼が埋め込まれている胸像が何点かありましたが?

北川:等身大を作る時に、義眼を入れるか入れないかで一年くらい悩んでいて…、タッチの粗い部分とぐっとリアルな部分のコントラストを出したいなって思っていたんです。それを出すために服を粗めに作って、義眼をいれるというのは一つの手段ではあったんですよ。で作ってみて、考えて…やめたんです(笑)。

●それは何故ですか?

北川:今回出品している義眼を入れている作品は、それなりの効果を出せていると思うのですが、制作上のリスクが高すぎたんです。
義眼をいれる場合は、眼の部分をくり抜いておいて、焼いた後に入れるんです。焼き上がりのイメージを考えて全体のバランスを見ながらどの角度で目を入れるか想定するんですが、当然のことながら焼きあがるまで義眼の黒目の大きさはうまくきているのか?とか視線の角度は良いか?等といったことを見ながら確認できないわけです。粘土の縮みもありますからね。
 
 
●最近の作品を拝見する機会といえば、4月の「アート・フェア東京2007」に出品されていましたよね。

北川:ええ

●2005年はアフターセールス含めて3億円の売り上げだったのが、2007年は最終日で10億になったそうなのですが。その辺り何か感じてらっしゃることはありますか?

北川:あっ、そんなに違うんだ。今年は自分の作品が初日のプレビューの時にほぼ完売したんです。そんなことって十何年彫刻をやっいて…初めてなんです。2005年の時は、ああ、何点か売れた、良かったぁ〜と胸をなでおろしてましたから。だってね、お客さんが接客を待って列になって並んでいるんです。スーパーの特売の卵が売れるみたいに自分の彫刻が売れていくんですよ!信じられませんでした。(笑)
 
●すごいですね(笑)。

北川:あとはアジアのお客様が多かったです。アジアの市場が日本のコンテンポラリーの作家に注目し始めているという話も聞きました。日本の無名の作家は値段もリーズナブルですからね。僕も八月と十月には韓国と中国でグループ展をやることになっています。

●海外からもオファーがあるということで、これから活躍の場が広がりそうですよね。

北川:今だけのバブルで終わらなければいいですが。発表場所が海外に移行しても、作品づくりの上で日本の事象への関心は変わらないですけどね。
 
 
●日本の若者、でしょうか。

北川:実は最近、自分がなぜ若い世代に興味があるのかを自己分析して、一応の答えが出たんです。それは、日本っていう国は将来いったいどうなっていくのだろう、というところから来ています。社会問題も山積みでしょ、長年外から日本を客観的に眺めてきてそう思うようになりました。愛国心も強くなったし。今実際に国を動かしているのはもっと上の世代ですが、将来、今の十代の誰かが総理大臣になるわけだし。彼らがどういう思考で生きているか興味ありますね。
イタリアの大学では、二十歳前後の友達とも多く付き合ってきましたし、例えば彼らが近所のおじさん、おばさんとどういった会話をしているかとか、大学の教授は彼らとどんな風に接しているかとかも身近に見てきました。それらと自分の若い頃、それと今の日本の若者たちを比較してみるといろいろとおもしろいんです。
まだイタリアにいた頃ですが、日本に一時帰国した際、NHK教育の『真剣10代しゃべり場』っていう番組とかもよく興味深く観ていましたよ。知っていますか?10代の子が一つのテーマで意見を交わし合うみたいな番組です。明らかに僕らの高校時代とはいろんなことが違っているんですよね。もちろん幼い部分もあるのですが、ある意味ニュータイプだなぁって思いました(笑)
 
●確かにそうですね。

北川:二極化しながら多様化して行っているという感じでしょうか?基本的には欧米化が進んでいるけれど、日本独自の進化も遂げていますよね。世界レベルで見た日本の特殊性というものは、作品を作っていく上でひとつのテーマになっています。

●北川宏人のしゃべり場を設けたらどうでしょうか。

北川:え、僕がですか?いや、そんな器じゃないですよ。でもゲストで呼んでくれたらちゃんと行きますから(笑)。
 
(2007.7 新宿高島屋10階美術画廊にて取材)  
  

 

北川宏人(きたがわひろと)
1989年 金沢美術工芸大学彫刻科卒業 翌年、渡伊
1998年 イタリア、カラーラ・アカデミア美術学院彫刻科卒業
2004年 帰国(現在東京在住)

主な展覧会
1998年 スワンプランド/レーゲンスブルグ ドイツ
1998年 奈義町現代美術館/岡山県 奈義町
2002年 日本領事館/ミラノ イタリア
2002年 ヨシアキ イノウエ ギャラリー/大阪 ('03, '04, '06)
2002年 スパッツィオ コンソロ(マレッラ アルテコンテン
 2002年ポラーネア)/ミラノ イタリア
2003年 アートフェアー、ボローニァ/イタリア
2003年 NiCAF東京/東京 
2004年 プレミオヴァスト/ヴァスト美術館/ヴァスト イタリア
2005年 アートフェア東京/ 東京  ('07)
2005年 もうひとつの楽園 〜Alternative Paradise
2005年 /金沢21世紀美術館/金沢
2006年 ジャパニメーション / 北京 中国
2007年 新宿高島屋美術画廊/東京
 
●information
■工芸館開館30周年記念展 || 工芸の力−21世紀の展望
The Power of Crafts: Outlook for the 21st Century

2007年12月14日(金)−2008年2月17日(日)
新宿高島屋の個展に出品された作品を中心に展示。

東京国立近代美術館 工芸館
〒102-8322 千代田区北の丸公園3-1
TEL:03-5777-8600(ハローダイヤル)
http://www.momat.go.jp/