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『狸の入院』(昭和27年・六興出版社刊)。垢石の入院話が収められている。表紙の装画は茂田井武。 |
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マヌケな話ではあっても、事態は相当深刻だったようで、垢石と美人社長、ともに人事不省となり、ちょいとした心中もどき。
呼ばれた医者によるカンフルやら強心剤の注射によって応急処置がとられ、意識は戻ったものの東大病院にかつぎ込まれる。ガス中毒の影響で垢石の血圧が異常に高くなってしまったのだ。ところがその日は──、以下『狸の入院』(昭和27年・六興出版社刊)の本文から引用する。
だが、考えて見ると今日は午後三時から四時ま
での間に、死んだ高田保の告別式が文藝春秋新社
で催される。俺は死んでもその告別式へ行つて、
抹香を三ひねりひねらねば、ならない。なぜなら
ば、高田は亡者としては俺より先輩だ。万一俺 |
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