|
とはいえ著者は「そういうことには全くこだわらず、一般の社会人を頭に置いて、私はこれを書いた」といい、さらに「私は自分の貧しい人生経験のすべてを投じて、いわば体当りになって本書を書いた。これは私の内的自叙伝である」と語っている。いわば河盛版「徒然草」。
このエッセーの中では、ハタと膝を打つような一節と出合える。たとえば「イヤなやつ」という項では──
いくらすぐれた人、立派な人でも、好きになれ
ない人、親しみのもてない人がいるものだ。私
個人についていえば、同じく偉い人であっても
、漱石には私淑する気持はあるが,鴎外には親
しみを感じることが少ない。
また「エスプリとユーモア」と題して
エスプリとは、相手の武器を逆に取って、相手
をからかったり、やっつけたりする、一種の自 |
|
これはまた、たっぷりと厚い(306ページ)河盛好蔵訳編『ふらんす小咄大全』(昭和43年・筑摩書房刊)。そのうちの一章を後輩の仏文学者の伊吹武彦が受けもっている。お色気満載のこの本の出版20年後、河盛は文化勲章を受章している。 |
|