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しかし、表紙はなかなか色っぽく、粋人挿画家と知られる清水三重三による、豊満な女体の入浴姿。
いとしいですね、こういう、物資が思うままにならない時代の健気(けなげ)な出版物。戦前、あれほど図版に執着した著者の本でありながら、制作費の都合か、表紙以外、一点の(挿画の)サービスもない。
目次を開く。第1章は「この乳房を見よ」。もちろんニーチェの「この人を見よ」のもじりでしょう。内容は、ドイツならぬ日本の奇譚・縁起物語。おや「夜の師直」のタイトルが。これは、先に紹介した『殿方草紙』に収録されている作品ではないですか。「真暗な中の喜劇」と題する「デカメロン」からのシナリオもご披露。
うーむ、やはりベルリンに遊学した森鴎外との話がある。「寝台の下の胴」。ちょっと引用してみます。
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なんか妙に懐かしい表紙絵『東京の女』(昭和23年・自由書房刊)。清水三重三による絵柄もあるのでしょうが、粗悪なインクの感じが貧しくて懐かしいのでしょうか。 |
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