高橋美江 絵地図師・散歩屋
窪島誠一郎「ある若い画家への手紙」−信州の二つの美術館から−
もぐら庵の一期一印
日野之彦
小滝雅道
遠藤彰子VS佐々木豊
長谷川健司・中野亘
松本哲男
やなぎみわVS佐々木豊
清野圭一
Jean Claude WOUTERS ジャン・クロード・ウーターズ
長尾和典VS鷹見明彦
わたなべゆうVS佐々木豊
カジ・ギャスディン・吉武研司
千住博VS佐々木豊
山本容子VS佐々木豊
上條陽子
山口晃vs佐々木豊
山田まほ
中堀慎治


'Round About


第19回「なおかつ描く」が大事 松本哲男

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  ●つまり、プロの芸術家の卵を育て上げることが第一義ではないということなのですね。

要するに「芸術家製造工場」ではない。「人間養成工場」なんですね。チャレンジしなさいと言うのは、そのことで自分をわくわくさせなさいという意味です。元気のいいやつがものをつくるということが原点なんですよ。つくりたいという欲求をたくさんもっている人が、世の中をどんどん変えていくわけですから。


●今回、いわば「人間養成工場」の社長に就任したわけですね。教職員と学生を束ねてどのような意気込みで前に進んでいくのでしょうか?

社長とは違うんです。主役は学生なんですよ。僕じゃない。あくまでも僕は、学生に対する一番の奉仕者です。常に何が大事なのかということをを見て歩く警備員みたいなものです。

●学長の仕事に忙しく、絵を描く時間が不足しませんか?

僕は絵を通して人生を考えます。だからこそ学長職を引き受けました。いま学長になって、かなり時間を取られていますけど、絵は前より厳しく描かなくてはならない。時間はとられていても必ず制作の時間をつくります。両輪で、がーっと進んでいく。絵が小さくなったら俺じゃなくなるんだよ。前進しなくなる。学長の仕事も絵を描くのも、どちらも半端ではいけないですからね。ものすごい数の生徒を預かっているわけですから、中途半端になってはいけない。
 
  
   
  
   
  
  ●作品の質にはどのような影響がありそうですか?

ものすごく絵が良くなるんじゃないかなと思います。いままで絵描きだけでのんびりしていたけど、学長という変なこと(笑)をやらされて、緊張感が生まれます。いままでだらだらしていた絵の生活がコンパクトに締められていく。絵を描き出した時もそうでしたから。もともと高校生を教えていて、学校ではとことん生徒に密着して付き合っていました。だから学校内では、自分の絵を描くことなどできませんでした。その代わり、家に帰ってから自分の制作をする。そういう生活を続けていましたから。

●まさに原点回帰ですね。

50代は滝の絵で10年間が終わってしまいました。俺の50代返してくれ(笑)と。今度は60代の生活をもっと厳しくして絵を描き続けます。描けないとイライラするものですから(笑)。
 
  
   
  
   
  
 
東北芸術工科大学にて取材) 
 
  
  

 

■松本哲男 略歴
1943年 栃木県生まれ
1968年 宇都宮大学教育学部卒業
1968年 栃木県立那須高等学校に美術教師として
1968年 赴任、72年まで勤務
1972年 日本美術院院友に推挙、今野忠一氏に師事
1974年 日本美術院特待
1968年 再興第59回院展 日本美術院賞・大観賞
1983年 日本美術院同人
1984年 芸術選奨文部大臣新人賞
1989年 再興第74回院展 文部大臣賞
1993年 再興第78回院展 内閣総理大臣賞
1994年 日本美術院評議員
1994年 栃木県文化功労者
1996年 東北芸術工科大学術学部美術科(日本画コース)教授
2005年 「松本哲男展 世界三大瀑布完成を記念して」展
2005年 (宇都宮美術館)開催
2006年 東北芸術工科大学学長に就任