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それぞれ岡村先生のコメントもついています。
竹内君とでやっている田んぼでは、田植えや稲刈りの時、いろいろな美術大学の学生や、すでに作家として活躍している人たちも、毎年たくさんやって来て、人によってはここ何年も、手伝ってくれています。別に何の見返りも差し上げられないのに、ただ、土や泥の感触や、実った稲の刈り取りの喜びを楽しんでくれているようです。キャッキャと言いながら、みんな一生懸命、時には黙々と、でも和気あいあいと作業をしています。なんだか本当に申し訳ないと思いながら、この人たちは本当に素晴らしい人々だと、ほとんど感動すら覚えます。どうしてこのような人間が育つのだろうか?
考えてみたら、今まで美術をやってきて、こういう素敵な人々が、僕のまわりには何時もいたように思います。純粋で真剣に自分と向き合っている人間。みみっちい損得感情で動かない人間。どの人たちも、自分の作品を描くのと同じように、自分の生き方を描き出そうとしているようにさえ感じられる。そんな人たち。
美術をする人々には、こういう人たちがたくさんいる。だとしたら、美術というもの、そのものに、そういう人間を育てる力が有るのに違いない。
僕はよく保護者の方たちから、「卒業後の就職の方は、如何なのでしょうか?」という質問を受けます。もちろん大学では、就職対策はとても重要な事なので、とても力を入れているし、それなりの結果を出してもきています。それでもやっぱり、絵なんか描いていて、どんな就職があると言うのだろうか…?やっぱり画家?え〜と、それとも…??う〜ん、よくわからない。
就職をして、メシを食うことが大切だと思ったら、もしかしたら手っ取り早く専門学校へ行って、技術を学び、使える人間になった方が効率的かもしれない。だとしたら、大学は、専門学校とは違って、もっと別の事のために来る所でなければならない。で、それで、僕は、大学で、何を教えてたんだっけ?
う〜ん、そうだ!僕は大学で、「どうやって」メシを食うかという事より、「何のために」メシを食うかという事を教えているのだ!…現実には、僕の方が、学生から教えられているような気もするけど。
美術の世界は、心とか精神とか、感動というものには近いけれど、生産性とか経済性というような、金儲けとは距離のある世界であることは間違いありません。だから、生産性の向上につながらない美術なんてものは、最近の中学校や高校の学校教育の現場からも、どんどんと閉め出され、だんだん授業時間を減らされて、今では風前の灯となってしまっているのです。そしてそれは、僕たちの社会の価値観の投影でしかないのだろうとも思います。確かに格差社会やワーキングプアなど、それらは明らかに深刻な社会問題ですし、僕だって、「どうやって」メシを食っていったらよいのかという事は、かなり深刻な問題でもあるのです。それに比べ「何のために」メシを食うかなんて事は、そんなこと、いちいち考えなくともすんでしまうという現実もあります。
それでも、例えば、野に咲く花の一つ一つに、生命の不思議を感じたり、その華麗な美しさに心を動かされるような、人として自然な心を皆が身につけていれば、世の中は自然と変化して、この歪んだ社会もしだいに浄化されていくだろうに、と思うのです。
絵を描くという事は、感動するという事と関係があります。感動するということは、例えば、いのちとか、愛とか、心とか、そういった精神的なものと深く関係があります。そして、僕たちの発想にも、大きくかかわっています。
以前にも話した通り、数万年もの間、人類とともにあった、現代において芸術と呼ばれているようなものを、人々が軽んじ、教育現場からも閉め出してしまっているような、歪んだ、うんざりするような現代社会。生産性や経済性ばかりが追い求められ続けた末に、この社会があります。そしてこれから先も、死ぬまでずっと、僕たちはこんな社会の中で暮らしていかなければならないのでしょうか。
【インフォメーション】
10月7日から河口湖ミューズ館 与 勇輝 館で「岡村桂三郎作品展」が開催されています。
お近くにお出かけの際は、ぜひお立ち寄り下さい!
展覧会名
岡村桂三郎作品展
会場
河口湖ミューズ館 与 勇輝 館
山梨県南都留郡富士河口湖町小立923 八木崎公園
tel:0555-72-5258
http://www.musekan.net/
会期
2006年10月7日(土)〜2007年3月21日(水)
*毎週木曜日・年末休館
時間
9:00AM〜5:00PM *入館は4:30PMまで
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