高橋美江 絵地図師・散歩屋
窪島誠一郎「ある若い画家への手紙」−信州の二つの美術館から−
坂崎重盛 新刊・旧刊「絵のある」岩波文庫を楽しむ
橋爪紳也 瀬戸内海モダニズム周遊
外山滋比古 人間距離の美学
もぐら庵の一期一印
その14-「やぶ蚊」は、オロカモノである。
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 いやー、今年の夏も、やっぱり暑かったですね〜。9月に入って、このところ、やっと、ひと頃よりは、少し涼しくなったような気がしますね。よかった、よかった。少しずつ秋めいてきたのか、日中は暑いですが、朝晩はだいぶ涼しくなってきました。少しだけ、ほっとしてます。
 
 ところで、山形の夏もけっこう暑いのです。山形の方はみんな、「山形の夏は、暑いですよ!何しろ、日本の最高記録の気温を出しているのですからネー。」などと、どことなく誇らし気に語ってくれるのですが。う〜ん、でも、どうでしょう、僕はやっぱり、埼玉県の方が、はるかに暑いとキッパリと思います。詳しいデータがある訳ではないのですが、埼玉県の方が、おそらく湿度が高い。なにしろ、朝から夜中までズ〜〜と暑いまんまだし、家の中の温度計を見ると、日中は38度や39度くらいはあったりするのが、普通なのですから。だからなのか、いつも感じていることなのですが、山形と埼玉では、植物のはえ方や種類が、ずいぶんと違うような気がします。 
 この気温と湿度、雨、そして夏の太陽光線のおかげで、僕の家の庭?およびその周辺、それから、田んぼや畑に生えている雑草達(野草とも言う:しかし、僕達が特に育てようとは思っていない植物達)は、元気にすくすく育っていって、そして、僕が大学の仕事などで、ちょっとうっかりして、留守にしている間に、そこには、とんでもない世界が展開してしまっているのです。そしてそれは、まさにジャングルと呼んでも、まったく差し支えのない風景が広がっているのです。
 お盆が過ぎたころ、大学の仕事が一段落付いて、やっと制作に取りかかれるかと思っているところなのに……。来る日も来る日も草刈をして、このジャングルを切り開いて行かなければならなかったのです。…ブツブツ。



 そして、そのことから始まって、毎年、さらに不愉快な出来事に襲われるのです。
 それは、「やぶ蚊」です。雑草や雑木林の中には、膨大な数の「やぶ蚊」たちが、棲息していてることを皆さんはご存知でしょうか。そいつらがみんな、群がってやって来て。何匹もの蚊が、僕の体中にへばりつき、チューチューと生き血を吸い始めるのです。あっという間に、足や腕、顔に首、あっちこっちで、十数ケ所、いやいやそれ以上、ボコボコに腫れ上がります。カユイの何のって、モ−ッ!コンチクショーッ!!
「僕の血なんて、あんまりフレッシュじゃないし、不健康そのものなんだゾ!こんなものを体内に入れたら、病気になっちゃうゾ!」だいたい何とも理不尽なのは、僕の大切な血液を勝手に摂取しておきながら、その恩人に対して、こともあろうに、こんなにカユイ思いをさせるとは、なんという恩知らずな!「このフトドキモノ!オロカモノメ!!」



 ところで、この夏も、たくさん草を刈ってしまいました。僕自身、草刈機を二種類も所有していて、用途に応じて使い別けるほど、草刈をしています。自分の家の敷地以外も、周辺の空き地や、山の斜面、田んぼのあぜ道、などなど。近所の人々には、感謝もされているのですが……。
 でも、山川草木すべてのものに、仏性が宿っているのだとしたら、僕はなんと恐ろしいことをしているのでしょう。
 しかし、僕達人類が生きていくためには、自然をある程度コントロールしていかなければ、やっぱり生きてはいけない。自然は素晴らしいが、自然のまんまだと、やっぱり暮らしていくのは、なかなか大変だ…。と、やぶ蚊に刺されて、カユイカユイあっちこっちを、ポリポリ掻きむしりながら、つくづく感じることなのです。

 以前、何かの本で、「人類最初の自然破壊は、農業の発明であった。」と、いうような一節を読んだことがありました。人類が生存し続けるためには、ある程度の自然破壊は、どうしたって犯さなければならないことなのかも知れません。
 重要なのは、自然と人間との関係。そこの所を、どのように感じ、考えていくのか、ということなのでしょう。そこの部分に、思想が生まれ、科学が生まれ、宗教が生まれ、美術も生まれているのです。そして、その関係の中でしか、僕達は生きては行けないのです。
 
 僕は今まで、膨大な量の植物を刈ってきました。草刈機のエンジンをブルブルいわせながら、バリバリ草を刈ってます。しかし、それらの一瞬一瞬の、その刹那、今、まさに自らの生命を謳歌している植物のフォルムを、切られていく一瞬のフォルムを、僕は見ているのです。そして、それらの膨大なフォルムを、頭の中にインプットして、僕のイメージの鉱脈の一つにしているのです。 
   
 
【インフォメーション】
 岡村桂三郎先生が「BANDED BLUE 東北芸術工科大学の28作家」、「五島記念文化財団設立15周年
 記念グループ展」に出品されます。お近くにお出かけの際は、ぜひお立ち寄り下さい!


 
   ●BANDED BLUE 東北芸術工科大学の28作家  

展覧会名 BANDED BLUE 東北芸術工科大学の28作家
会場 鶴岡アートフォーラム
 山形県鶴岡市馬場町13-3
 tel:0235-29-0260
 http://www.t-artforum.net/
会期 2005年9月16日(金)〜2005年10月2日(日)*9月20日、26日休館
時間

9:30AM〜7:00PM(施設は9:30PMまで開館)

入場料

一般500円、学生300円、小中生は無料

  

芸工大のホームページtopicsコーナーにもご紹介があります。
http://www.tuad.ac.jp/index.html


   ●五島記念文化財団設立15周年記念グループ展  
展覧会名 五島記念文化財団設立15周年記念グループ展
会場 Bunkamura Gallery 1Fメインロビーフロア
 渋谷区道玄坂2-24-1(東急本店横)
 tel:03-3477-9174
 http://www.bunkamura.co.jp
会期 2005年9月23日(金)〜2005年10月2日(日)*会期中無休、入場無料
時間

10:00AM〜7:30PM

主催

(財)五島記念文化財団


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