高橋美江 絵地図師・散歩屋
窪島誠一郎「ある若い画家への手紙」−信州の二つの美術館から−
坂崎重盛 新刊・旧刊「絵のある」岩波文庫を楽しむ
橋爪紳也 瀬戸内海モダニズム周遊
外山滋比古 人間距離の美学
もぐら庵の一期一印
その16−そうだ、芸術家はスキーに挑戦するべきだ!そして、いつの日か爆発するのだ!

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 「よーし、こんどは田んぼの事を書いて、その次は、釜石鉱山へ日本画言論2の授業で行ったことを書いちゃうぞ!あれも凄かったよなー!」などと、秋頃はちょっと意気込んでたのですが、その意気込みも空しく、随分とご無沙汰してしまいました。ごめんなさい…。
 とにかく大きな個展が二つもあったし、入試も二回あったし、大学の授業は学年末だし、うちの息子は高校受験だし、他にもいろいろあって、手も足も出せない状態でいました。……と言うのは、全部いいわけですけど。
 ともかく、展覧会では様々な方々の沢山の来場、ホントにありがとうございました!関係者の皆様にもこの場を借りて、お礼を述べたいと思います。
 ありがとうございました!!新しい勇気をもらいました!!!


 しかしその頃、この「ART ACCESS」の責任者のシゲノさんは、「岡村君のことだから、たぶん書かなくなっちゃうんじゃないかな〜。」と、僕に対する正確な性格分析を基に、(僕には、全く予測できなかったのに)そうなるであろうことを完全に予測していて、ちゃんとその穴を埋めるべく、
「'Round About」というコーナーで、佐藤美術館の個展を取り上げてくれたりしていたのです。(エラい!)そのうえ、こんど4月に出る『アート・トップ』で、僕の事を取り上げてくれるようです。それから、gaden.のコイチさんも、コバヤシ画廊の個展を取材してくれました。「Kaleidscopic Gallery Scene」で紹介してくれています。(ありがとう!)どれも、真面目モードで作品について語っているので、ぜひ覗いてみて下さいませ。
 
 ところで話はかわりますが、今年の冬は寒かったですね。そのせいか、今年の越生の梅は、今ごろになって満開になりました。そんな梅の季節、僕の家の近所にある虚空蔵尊では、達磨市が開かれました。ふだんは人影のない寂しいお寺なのですが、年に一度だけ、この達磨市の日だけはまるで花が咲いたように、たくさんの人々で賑わいます。達磨市としては、関東では一番遅くに開かれるものだそうです。
 何のこともない、いかにも田舎の祭りという感じなのですが、のどかな風情があって、僕は好きです。個展も終わり、少しホッとできる時期でもあり、毎年必ず出かけて行き、達磨を買ってきては、「今度こそ、よい作品ができますように。」と決意を新たにして、片目を入れています。









 決意と言えば、ここでも話は随分かわりますが、実は僕、恥ずかしながら告白すると、この歳になって、初めてスキーをしました。
 実は今まで、スキーをする機会に恵まれず、本当にやった事が無かったのです。芸工大に来てからは、蔵王スキー場も、車で20分の所にあるし、「やってみたいな〜。」とは思っていたのですが、忙しさにかまけて、なかなか実行に移すきっかけをつかめないでいました。そんな僕の姿を見て、背中を押してくれたのは、体育の柳川郁生先生でした。
 ある日、授業から戻って来ると、柳川先生のお古のスキーセットが、僕の研究室のドアの裏側に鎮座しているではありませんか。そのスキーセットには、「これ使って、スキーしようよ。」という柳川先生のメッセージが込められていることは明白です。僕の心の中に秘めている、飽くなき「遊び」への欲望。その欲望は着火され、炎がメラメラと大きく燃え上がるのを感じるのでした。欲望の炎に身を焦がしながら、僕はスキーを始めることを決意したのです。そして、柳川先生の弟子となってしまったのです。
 

岡本太郎「岡本太郎の挑戦するスキー」
講談社(絶版)
 そういえば、岡本太郎だって40代でスキーを始め、その腕前は相当なものであったことは有名な話だし。読んだことはありませんが、「挑戦するスキー」(絶版)という本まで書いています。三浦雄一郎は「芸術だけじゃなく、スキーも爆発なのである。」と岡本太郎のスキーを評しているのだそうです。
 そうだ、芸術家はスキーに挑戦するべきだ!
 そして、いつの日か爆発するのだ!


 僕のスキーは、今のところ爆発どころか、まだまだ、ヨチヨチのピヨピヨ状態ですが、それでも面白いんですね〜、これが。柳川先生の指導が良いせいか、ともかく楽しい。おまけに、蔵王のスキー場も素晴らしい。天気が良い日に出かければ、樹氷の上に広がる青空、キラキラ輝くダイアモンドダスト、月山や朝日連峰の荘厳な姿、時には鳥海山までもが望める時があります。
 芸工大には、スキーの名手で、スキーが大好きな方々が沢山います。僕が一緒に滑ったことのある人たちだけでも、日本画では、松明を持って滑らせたいほどビューティフルな滑りの、院展特待の番場三雄先生、まるでスキーのインストラクターのようにスイスイ滑る、ドイツ帰りのスイスイ末永敏明先生、ガッツでガンガン、バリバリ滑りまくる、ノーボーダー・ガッツ長沢明先生(MOTアニュアル2006 No Border−「日本画」から/「日本画」へ:東京都現代美術館に出品してました。)。洋画では、「昔の滑り」で一度は頂点を極めながらもフォーム改造、今ではカービングスキーの名手になってしまった二紀会会員の木原正徳先生。教養部からは、滑るのも巧いが教えるのも上手!!象徴の森の夜のコーディネーターでもある、心理学の小松秀茂先生、「エッ!この歳でこの滑り?!」誰でも驚いてしまう爆発的スキーヤー、僧侶でありながら英語の教授でもある尾形良道先生…(芸工大の中にはスキーの名手はまだまだ沢山いるようです)。
 実は、このメンバーに、僕の師である柳川先生と芸工大OBで史上最強のスキーヤー長谷川元氏や長沢スポ魂家族(奥さんと息子達もメチャウマでした)も参加して、学生達のたっての要望もあって(それが原動力になって、実現できたのですが)、「日本画スキー合宿/1泊2日」なるものを、この冬、決行してしまったのです。
 いや〜、楽しかった!またやろう!!!
 
 未知のことに挑戦する。そして、未だ味わったことのない、全く新しい感動を味わう。そういった経験は、新しい発想のために、僕の頭の中を造りかえ、更新してくれるものになってくれるはずです。そうだ、今年買った達磨に片目を入れる時、「スキーも上手になりますように!」と、新たな願いをもう一つ込めることにしよう。そして、ヨチヨチスキーから脱却し、いつの日か、爆発的スキーヤーになるのだ!

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