高橋美江 絵地図師・散歩屋
もぐら庵の一期一印
(つづき)
  
 麻酔が切れたころから、僕の左目は、だんだんと痛み始めました。そして、それはしだいに、激痛へと変わっていったのです。眼球をちょっとでも動かそうものなら、今までに味わったどんな激痛よりも遥かに「ゲキツー!」と呼ぶにふさわしい、もうどうしようもない、激痛の中のゲキツーです。それが、あのツンツンの尖った針のことから始まったことであるし、僕の目玉の出来事であることと、右目でモノを見ようとすると、左の眼球も動いてしまい、グキッ!というような感じでゲキツーが走るので、右目も開けることができない、なんだか取り返しの付かない、大混乱の、真っ暗やみの、苦しい激痛なのでした。そして、僕はその苦しみを二日半も味わってしまったのです。それでも最後の半日くらいは、激痛というほどの痛みではなく、でも恐いので、右目も開けることができず、暗闇の中でじっとしていたのですが、本も読めず、テレビも観ることができない、ラジオを聞いているのですが、飽きてしまい、スティービー・ワンダーのことなどを思い出したりして、ラジオから流れてくる音楽のリズムにあわせてテーブルを叩いてみたり、すぐに飽きましたけれども、体でリズムをとってみたりして、それはそれで、辛く、悲しい、一人、孤独な時間を過ごしていました。この世の中には、視力を全く失ってしまった人たちが沢山いて、それは、こういうことなのかと思うと、なんだか、底なしの悲しみを感じました。  
     
「僕と握手している人は、入試課長の花岡さんです。こういう立派な人がいてくれる おかげで、大学の入試はちゃんと行われるのですネ〜。ありがとうございます!!」 
 
 それはそうと、僕がゲキツーによって唸っているころ、まずいことに、芸工大は、入学試験日だったのです。
 そして、僕は、『入試部長』なのです!
 ということは、これは、こともあろうに、「入試部長が入試をサボった!!」ということなのです。まずいって、こんなにマズイこともあまりないことでしょう。まあ、僕の場合は、普通の人よりも、マズイことを人一倍行ってしまうタイプの人であるので、このレベルのマズイことは、有り得ることなのですが、やっぱり大学としては、当然、有り得ないことなのです。
 という訳で、僕が大学に復帰した時には、大学中の教員と事務職員は、この僕の眼球の事件のことを知っていたのでした。会う人、会う先生、みんな僕に 「眼、だいじょうぶ?」「失明するんじゃないかと思ったよ。」と言いながら、僕の目玉を覗きこんできます。
 僕はそのたびに、「ああ、いやいや、だいじょうぶ、だいじょうぶ、あはは…」などと言って、切り抜けているのですが、いや、回数が回数なので、・・・つかれました。
 「これからは、気を付けます・・。」

 一方、大学の入試も特に問題なく、無事に終了したそうです。よかった、よかった。おまけに、今年度の全体の受験者数は、去年度の受験者数に比べると、約120%の伸び率ということだったそうです。いまどきの大学の状況としては、これは驚異的な伸び率だったようです。よかった、よかった。
     
   
  【インフォメーション】
岡村先生が出品されるMETA展と先生の教え子達の展覧会(大学院修了制作による展示です)が行われます。お近くにお出かけの際は、ぜひお立ち寄り下さい!


 
   ●META展  

展覧会名 META展
会場 神奈川県民ホールギャラリー
 横浜市中区山下町3-1
 tel:045-6333796
 http://www.kanakengallery.com/
会期 2005年4月20日(水)〜2005年5月1日(日)
時間

9:00AM〜6:00PM(最終日は4:00PMまで)


   ●高橋芙美子展  

展覧会名 高橋芙美子展
会場 ガレリア・グラフィカbis
 東京都中央区銀座6-13-4 銀座S1ビル1F
 tel:03-5550-1315
 http://gallery.to/grafica
会期 2005年4月4日(月)〜2005年4月9日(土)
時間

11:00AM〜7:00PM(最終日は5:00PMまで)


   ●佐藤裕一郎展  

「underground stem」 270×720cm 2005年
展覧会名 佐藤裕一郎展
会場 ガレリア・グラフィカbis
 東京都中央区銀座6-13-4 銀座S1ビル1F
 tel:03-5550-1315
 http://gallery.to/grafica
会期 2005年4月11日(月)〜2005年4月16日(土)
時間

11:00AM〜7:00PM(最終日は5:00PMまで)



   

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