高橋美江 絵地図師・散歩屋
窪島誠一郎「ある若い画家への手紙」−信州の二つの美術館から−
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'Round About


第43回 町田久美 VS 佐々木豊

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かなりカオスですよ
佐々木:線の作品はどのように始まったの。
町 田:ある日突然です。
佐々木:どんな時?
町 田:部屋に和紙を張ったパネルがありまして、「線で、描いてみようかな」と、ふと思ったんです。
佐々木:イメージはどこからくるの?
町 田:最初の頃は、福助とか縁起物を見て、頭の中で組み合わせてみたり。
佐々木:でも身の回りの物を描いていると尽きるでしょ。
 
町 田:最初の頃は、線の中に哀しいとかうれしいとか、自分のエモーションを込めることなく、ただ楽しくて描いていた感じですね。その後、込めるものが見えてくると、きっかけになる形は必要なくなってきた。
佐々木:その代わりに?
町 田:その代わりに感覚ですね。けっこう黒い気持ちばかりがむくむくとありまして、子どもの頭とか、身体のパーツとかがそれを表現するのに一番合ってくる。
 
佐々木:でも、子どもの手なんかは無茶苦茶難しい。見ないと描けないでしょ。
町 田:まずそれがあってというより、必要なので探してくるほうが近い。友だちの子どもとか。自分の手を撮影したり、鏡に映したり。あとは私が明治時代の大きな抱き人形を持っているんです。かなり手とかのモデルにしています。子どもの個性はあまり欲しくないので。
佐々木:既製の印刷物とか古い作品とか、そういうものは利用しない?
 
町 田:縁起物をモデルにしていた頃は、広告の図像を使った作品を描いたりしましたが、今はないです。
佐々木:他に、イメージの出所は?例えば、真っ白なスケッチブックに戯れに引いた一本の線が呼び水になってとか。
町 田:ほとんど真っ白ですね。画面を前にして、なんとなく見えてくる何かがあったりして。合理的に組み立ててやっているのではと思う方がいらっしゃいますが、かなりカオスですよ。
 
佐々木:かなりいい加減?
町 田:いい加減というか、描き出しから実際に筆を終えるまでの間でかなり変化するんです。
佐々木:じゃあ、丸を描いたときに、それがダルマさんなるのか、子どもの頭になるのかわからない。
町 田:未知数です。頭の中に何か浮かんできた形をとりあえず画面に存在させてみる。そこから始まるんです。なので小下図は描きません。
佐々木:描いた線が連想を呼び、とんでもないものが飛び出して、絵が面白く発展するとか。
町 田:へそ曲がりなので、時々それに逆らって、泥沼に入っていったりしますが(笑)。
佐々木:そうやってあなたの強烈な線のスタイルになる。
町 田:黒一色なのでわかりづらいですが、たぶん線を X 線か何かで調べたら、ものすごく気持ち悪い線の塗り重ねが見えるでしょうね。色で平面を塗るのと同じような気持ちで線を描いているので、言葉にできにくい感情が、線を描くときに生まれてくるんです。
 
  アート・トップ12月20日発売号(219号)より抜粋)  
町田久美(まちだくみ)
1970年群馬県高崎市生まれ。94年多摩美術大学絵画科日本画専攻卒業。99年前橋アートライブコンペ'99 グランプリ受賞。2006年アーティスト・イン・レジデンス・プログラム「ARCO」(大原美術館、岡山)。07年第四回上毛芸術文化賞受賞。Sovereign Asian Art Prize(中国・香港)受賞
個展は、05年、06年西村画廊ほか。
 
●information
個展予定
■2008年 2月22日−5月11日
 kestnergesellschaft (ケストナーゲゼルシャフト ハノーファー/ドイツ)

■2008年 6月24日−7月19日
 西村画廊
 

佐々木豊(ささきゆたか)
1935年(昭和10年)名古屋市に生まれ。
愛知県立旭が丘高校美術科、東京芸術大学油画科、同専攻科卒業。1992年、第15回東郷青児賞を受賞。国画会会員、講談社フェーマススクールズアドバイザー。
主な著書に「浮気な女たち」、「構図と色彩」、「はじめてのクロッキー」、「絵に描けなかった絵の話」・「泥棒美術学校」「画風泥棒」「プロ美術家になる!」(芸術新聞社刊)「佐々木豊画集−悦楽と不安と−」(求龍堂)など多数。


■おしらせ
この町田久美 VS 佐々木豊対談の他に、人気若手アーティストとの対談が収録されている「プロ美術家になる!」が 2008年4月に刊行になりました。

またアート・トップ2008年6月20日号(222号)で町田先生の特集が組まれています。