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それぞれ岡村先生のコメントもついています。
(現在書きかけ中!)
それは、短い時間で膨大な量の作品を観てしまったせいなのか、展示空間の創り方が悪いのか、それとも、その程度の作品だったのか、いや、実は、僕の感性が鈍ってしまったせいなのでは、と自分自身の感性に対しても、少々不安を感じさえもしました。
今までに様々な作品と出会い、感動してきた僕にとって、殆どの作品が、それらの延長線上のものとして見えてしまい、今まで何処かで見てきたもののように感じてしまったのです。
宮島さんも、「今回は、保守的な印象を受ける。」と言っていたけれど、その他多くの美術関係者からも、同様の感想が多いとも聞きました。
しかし、「その中では、ミュンスターの彫刻展が良かった。」という意見も多かったようです。僕自身にしても、ミュンスターでは、町の美しさも含めて、そのプロジェクト自体を楽しませてもらいました。
ヴェネチィアにしてもカッセルにしても、どこかアートやアーティストの見本市のようになってしまっている観のある会場に比べ、ミュンスターのそれは、作品と鑑賞者がどのように出会うかという、展覧会のあり方、根本的な美術作品のあり方について、その為の基本的な考え方が会場全体を覆い、この展覧会の根幹を貫いているような気がしました。訪れた僕たちは、作品を鑑賞し、作品そのものを発見する喜びとともに、そのあり様を思索する喜びを味わう事になるのです。
訪れた者は、作品とその作品が存在する風景、作品以外のものの存在や、作品の裏側に秘めているものも含め、試し・味わうことになるのですが、このプロジェクト自体も、この彫刻展に訪れた人々を、試していたのかも知れません。訪れた人々同士や、ミュンスターの地元の住民、そしてもちろん作品との触れ合いから、大きな流れを作り出し、街全体に活気に満ちた表情を表出し、表現しているようにも感じました。僕らは、それらをも楽しんでいたのです。
ところで、そもそも僕たちは、何のために、世界の東の端っこから、ヨーロッパまでやって来たのか?と問われれば、作品に感動したいがために、やって来たのだけれど、そもそも、作品に感動するということは、いったいどういうことなのか?ここで、少し考えたくなりました。
僕は思っているのですが、作品に感動するということは、その作品に「出会う」ということだと思っています。作品を前にして、何も感じないとすれば、僕は未だ、その作品に「出会えてない」だけなのだと考えますし、「出会えてない」ということは、僕自身の内側にその作品の内容と共鳴する要素が、未だに存在していないからなのだと思います。
例えばそれは、随分前の話になってしまいますが、僕が五島記念文化財団の研修員として、ニューヨークの付近に滞在していたことがありました。そのころよく出かけて行って、観ていた作品に、ニューヨーク近代美術館のバーネット・ニューマンの作品がありました。美術史的に、その作家のことは知ってはいたし、わかっていても、何となく冷たく拒絶されているようで、その作品からは、なにも感じることができませんでした。
僕は、その後しばらくの間、アメリカの中西部のナバホ地域のその茫漠たる広大な地域を、キャンピングカーを借りて延々と旅をしていたのでした。日本とは全く違う空間感覚や、風土を感じ、様々なことを考える事のできる、僕にとっては、重要な旅行だったのですが、その旅から戻ってからのある日、近代美術館へ行き、たまたまバーネット・ニューマンの作品を前にした時、僕は思わずその作品に心を打たれてしまったのでした。感動のあまり、目頭が熱くなったのを憶えています。
あの茫漠たる風景の中を旅するうちに、僕の心の内側で、何かが芽生え、育った感覚。それらが、バーネット・ニューマンの作品の裏側にある何かと、共鳴しあったのだと思います。「ああ、なんだ、この作品は、こういう作品だったのだ。」と、はっきりとその作品と「出会えた」のでした。
今、再び振り返って、それが予想を裏切る程の、大きなショックを受けるようなものではなかったとしても、それでも、今回の旅行中、いくつもの作品との「出会い」は確かにありました。それは、ヴェネチィアやカッセル、ミュンスターの空気感とともに、僕の心に刻まれて、芽生え、新しく育っていく感性となるのかも知れません。そして、それらの作品のことだけではなく、また、「出会う」、「出会わない」ということを超えて、これだけの展覧会を見て来て、感じたり、考えたことは、必ず、何年か経って後、僕の作品に影響を与えているものだろうとも思っています。
《ガイドブックより》
ああ、それから、忘れてならないのは、宮島さんに教えられて、ヴェネチィアから少し足を伸ばし、パドヴァのスクロヴェーニ礼拝堂のジョットーを見てきました。静かで、鮮烈な感動でした。そのことだけは、ここに付け加えておきたいと思います。
【インフォメーション】
現在開催中の
「現代日本画ワンダーランド」、「META||展」に岡村先生の作品が出品されています。
お近くにお出かけの際は、ぜひお立ち寄り下さい!
展覧会名
美術館で夏休みを過ごそう!−現代日本画ワンダーランド
会場
高崎市タワー美術館
群馬県高崎市栄町3-23 高崎タワー21
tel:027-330-3773
http://www.city.takasaki.gunma.jp/soshiki/art_museum/t/index.htm
会期
2007年6月30日(土)〜2007年8月26日(日)*月曜休館
時間
10:00AM〜6:00PM(入館は5:30PMまで)
*金曜日のみ8:00PMまで(入館は7:30PMまで)
展覧会名
META || 2007
会場
神奈川県民ホールギャラリー
神奈川県横浜市中区山下町3-1
tel:045-633-3795
http://www.kanakengallery.com/
会期
2007年8月14日(火)〜2007年8月26日(日)*会期中無休
時間
9:00AM〜6:00PM *最終日は4:00PM閉館
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