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エーッ、一席バカバカシイお噺をうかがいます。 あるところに二人の兄弟がおりまして、兄の方はどうしようもないグータラな怠け者。それにひきかえ弟の方は近所でも評判のマジメな働き者でございました。そういうわけで兄の方は堀立小屋同然のただ四方に壁があるというだけのアバラ家住まい。弟の方は同じようなアバラ家でも、まあそれなりの家財道具はそろっておりました。夏になりますてェと、なにしろアバラ家つづきドブ近く蚊柱立つを軒端にぞ見るってなことで、カホドウルサキモノハナシブンブトイフテヨルモネラレズどころか、晝寝さえもままならぬ有様。 「どうもしょうがねえなあ、蚊張でもなくっちゃどうにもならねえや。そうだ、弟のところからちょいと頂いてくるか。他人様の物をくすねるわけではないんだから、まあいいだろう。
といって弟が働きに出た留守をねらって蚊張を盗み出して、やれやれ極楽とばかりに高鼾。一日の働きを終えて帰ってきた弟。ふと見ると蚊張がありません。 「あれあれ、蚊張が盗まれちまった。あれがないと寝られたもんじゃない。困ったな。そうだ、あの橋のたもとの占いの先生に誰が盗んだか占ってもらおう。
というので、やって来て 「先生、蚊張盗まれちまった。誰が盗んだか占っておくんなさい。 「よしよし、何か字を書いてごらん。 「へい、じゃあこれで。
と書いたのが「四」の字。 「フムフム、ナルホド、わかったぞ。蚊張の盗人が。 「ヘッ、シテ誰が。 「ウン、この四の字はな、中で儿(人と同じ)がノンビリ寝ている形じゃ。こやつ、もともと蚊張なんぞ持っていなかった。だから蚊張(口)の外に引張り出して口と合わせて見い。どうじゃ、兄という字になろう。盗人はお前の兄じゃ。 「ヘェやっぱり。実はそうじゃねえかと思ってたんですよ。ありがとうございます。てんで。 |
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