初めて台湾に行き、台北市を回ってきた。4泊の短い旅だった。
私の漢字文化圏への旅はまことに限られている。韓国だけは、済州島(書道史上の抜きん出た巨人・金秋史晩年の配流先で寓居跡が残る)まではるばる出向いたというように、自慢できる程度には何度か足を運んでいる。だが中国となると、編入前の香港が1987年、前年の天安門事件の衝撃がもたらした残像も生々しく、日本人観光客が極端に少なかった北京を駆け足で巡ったのが90年と、つごう2回きり。今度の台湾行きも初旅というわけであった。
過熱ぶりが伝えられている上海を筆頭とする中国ではなく、台北をあえて旅先に選んだのは、台湾が大陸のように簡体字を採用せず、孤塁を守るかのように、今なお繁体字を固守していることと、もうひとつは、韓国のように被占領時代に日本によって建てられた建造物を破棄するようなことをせず、貴重な歴史遺産として残す姿勢を守っていることに興味を引かれたからだった。もちろん、故宮博物院を見てみたいという思いも強く作用した。
その故宮は本年度中に終了する予定の大規模な改修工事中で、一部の既存施設を使っての展示であったため、ちょうどダイジェスト版を見ているような感じ。短時間に効率よく見終えたが、物足りなさが残ったのは事実だった。
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