信ずるとは何か
―恒に転ずること暴流の如し
橋本凝胤・著
いま問われる、日本人の心がまえ。
われわれの生活はいつでも、
自らの心の生活でなければならない。
客観の生活であってはならない。
主観の生活でなければならない。
主体的に生きていかなければならない。
——「信仰する心とは」より
南都仏教・唯識教学の正統を継承し体現した生活を生涯貫き通した不世出の高僧による講話・論稿集成。
世の耳目を驚かす大激論となった徳川夢声翁との天動・地動説論争、高田好胤師との日本仏教のあり方をめぐる師弟対談等を併収。
【目次】
自然と不自然
I 信仰する心とは
吉と凶と善悪
現世社会における因果応報
苦と楽――因果の理法はごまかせない
《宗教的信念とは 対談・二代目 渋谷天外》
II 現代の処世訓
日本人の心がまえ
見かけ倒しのアメリカ
人間の業が人類を滅ぼす
《あやうい日本の幻影 対談・中西悟堂》
III 現世と救済
平素こそ大事
地獄はある
わが天動説の根拠
《問答有用 対談・徳川夢声》
IV 薬師如来の功徳
唯心の世界
六根清浄の道場
わが健康生活の実際
慈悲の心
薬師仏に助けられて
私の遺言状
《法は変わらず〈師弟対談〉 対談・高田好胤》
生死一如の道――解説に代えて:奈良・薬師寺長老 松久保秀胤
著者略年譜
【プロフィール】
橋本凝胤(はしもと ぎょういん)
1897年奈良県生まれ。1904年法隆寺に入寺、佐伯定胤大僧正に師事。宗教大学卒業後、東京帝国大学文学部印度哲学科に学ぶ。『大正新脩大蔵経』『大日本仏教全書』等の編纂に参画。1939年薬師寺管主、1941年法相宗管長に就任。1967年薬師寺長老。厳格に戒律を遵守して肉食妻帯せず、南都仏教・唯識教学の正統を継承し、体現した生活を生涯を貫く。国内はもとより、中国、インド、欧米諸国を巡り、講演・教化活動を行なう。政財界との交流も広く、文化財保護や平城京跡地の国有化に尽力。1960年藍綬褒章受章。1978年遷化。著書に『仏教教理史の研究』(全国書房)、『般若心経講話』(誠信書房)、『心の安らぎ』(春秋社)、『人間の生きがいとは何か』(講談社現代新書)、『変らざるもの』(筑摩書房)等がある。