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師走に入った頃、日本で知り合った
韓国の篆刻家・柳在學先生
から手紙が届いた。私宛に個展のご依頼だ。去年の8月に私の書斎を訪ねてくださり、ご帰国後すぐに先生は私の韓国での個展を計画してくださっていたのだろうか。
海外の個展だとなぜか燃えるものがある。でも一番の問題は言葉のことだ。打ち合わせのこと、作品の翻訳、向こうでの通訳…どうしたらいいのだろう。
そうこうしているうちに、以前、柳先生が日本で個展をした際に手伝った大阪のギャラリーから「柳先生とのやり取りなら、当方がお世話します」と連絡があった。今まで柳先生と何回もハングル語でやりとりをしているギャラリーの女性からだ。こちらが思ったことを伝えると、勝手の慣れた人が翻訳して先生へ伝えてくれる。本当にツイている、なんとも心強い味方ができたものだ。
数日後、先生から初めての質問が届いた。「会期はいつ頃が良いだろうか。具体的に作品がどんなものか、数は? 大きさは?…おおよそを教えて欲しい」という。その返答に添って会場を決めてくれる
らしい。ちょうど師走だったので、年賀状に韓国展のお知らせを書くことにした。
日本でお会いした柳先生は情熱あふれる人で、きっと私の個展も力を注いでくれることだろう。場所も日時も何も決まっていないが、返答を考えながら自分の心を固めていく。最終的には5月10日〜16日、韓国第4の都市である大邸(テグ)という場所に決まった。どこの街のどんなギャラリーか、おそらく聞いても分らないのでお任せしよう。
だが自分でも計画は立てる。「お正月が過ぎた頃…そう、作品づくりは2月に入って始めよう。2ヶ月もあればできるだろう」。「絵や印墨画、印をどれだけ持っていこうか…。コンパクトな掛け軸もいいなぁ」。「ガラスの入った額は重いから送料も高い。よし、作品は額なしでいこう」。
「中国展の時に中国語の作品をつくったように、今回はハングル文字で表現するのもいいかもしれない」。そこで翻訳する人に「あちらのことわざが載っている面白い本があったら買って来てください」と頼んでみた。だが私が思っていたほど面白くはない。日本国内でも探して取り寄せてみたものの、これまた面白くない。「ならば自分でつくった言葉を入れよう」。翻訳の人にニュアンスを伝えて、ハングル語に置き換えてもらうことにした。
とはいうものの、印の説明や言葉を合わせると300種ぐらいは訳してもらわないといけない。しかも、平行して柳先生への返事やこちらからの質問を韓国にメールもしてもらわなければならないから大変だ。2月に入ってから、翻訳の人と数回の打ち合わせをしている最中、「パンフレットをつくるので、その資料を2月中に送って欲しい」と来た。
さてさて…経歴書、顔写真、今回の作品展への思い、作品リストなど、急いで揃えることが次から次へと山ほどある。
悪戦苦闘しながら「個展への思い」の文章をつくったり、写真を撮ったり…。わかっていたことだが、実に慌ただしい。
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