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編:ではどんな時に描かれるのですか?
も:絵の方は注文されることがない限り、描くことはありません。ほとんどの絵は個展のために描いています。個展の日にちが決まると、そこから仕上がりを逆算して描き出す日を決めていきます。だいたい2ヶ月前からです。
それまでは我慢して描きませんが、その日が来ると、どんどん描いていきます。その時、「何枚を仕上げる」という意識は持ちません。この辺でやめようと思うまで描き続けるのです。後で数えてあまりの多さに自分で驚くこともあります。これは私のものづくりのエネルギーなので止めることはできません。
完成とともに忘れていきます。また他の昔の作品を懐かしがって見るということもありません。
編:そういえば、家の中には絵はありませんねぇ。
も:えぇ自分の絵、そして他人の絵も飾ることはしません。すべて過去のものだからです。これから作るものが一番素晴らしいと思うし『笑いと愛』は永遠のテーマです。
編:だから作品がこれほど軽快でユーモアに満ちているのでしょうね。
も:そうかもしれません。
そうそう外は風が出てきましたねぇ。この笹の音がまたいいでしょう。雨の音や草の音を聞きながら、風呂に入ったりお酒を呑んだりすることはほんとうに幸せなことです。
編:2ヶ月前から一気に描きはじめるということでしたが、どんな方法で描かれるのですか?
も:私の絵は他の人の作品と少し違うと思います。1枚に1点ずつ描きません。大きな和紙にフレームを区切って何点も同時に描いていきます。1枚ずつ表装だと表装代が高くなってしまうので、大きな紙にいろんなサイズのものを描いてまとめて表装をした後に、必要なサイズに切り取ると、いっぺんに何枚もの作品が出来上がるのです。
編:いい考えですねぇ。絵の方ははじめの方から比べると変わりましたか?
も:えぇ、振り返ってみると私の作品は、当初から随分変わっていったと思います。これは「もっと、もっと、それ以上にできるはずだ」と自分に言い聞かせる、もう一人の自分がいるのです。 例えば、誰かが私の絵を見て「いいですねぇ」と言えば、もう一人の私が「それ以上にもっとできるはずだ」と自分に言ってくるのです。 それは形だけでなくほんとうに違ったアイデアが出てくるのです。
編:面白いですね。
も:そうなんです。だんだん面白くなって、次から次へとアイデアも変化したものが生まれてくるのです。
もちろん、お客さんが反応しなかったら、私の作るものは昔のまま止まっていたことでしょう。 ただ、もう一人の自分がいることは作品づくりには大いに励みになっています。 それは自分の中にしかない、楽しいことなのです。
編:これからまた変化して、ますます発展していくといいですね。
それとお粥、ごちそうさまでした。 とても居心地がよかったので、ついつい長居してしまいました。
も:ちょっと辺りを歩きませんか?陽も出てきたので、だいぶ暖かくなったでしょう。
編:いいですね。
外の空気を吸うたびに生き返るような気がします。

…二人で山のあぜ道を歩いていると、足早のもぐら庵について行けずに、とうとう姿を見失ってしまう。
一面静まりかった竹林。振り返って見るとさっきまで居たはずの草庵さえ、影もかたちもまるでない。
編:あれ……。
あたりは一面静まりかった竹林。振り返って見ても、さっきまで居たはずの草庵さえ、影もかたちもまるでない。 |
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編:さっきまで話していたのは間違いない…。
あの主屋から見えた風景は夢だったのだろうか…。(終わり)
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