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丸い眼鏡
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 私のトレードマークは丸い眼鏡。それはモグラを意識したのではないが茶色い玉。眼鏡を掛け始めたのは中学生の二年生。当時中学校は時代のせいか、教室は暗く照明も少なかった。だから雨の日は黒板の文字が見えない。それから眼鏡をかけるようになった。だから勉強のやり過ぎではない。
 思えば当時から今までずっと眼の度数は変わっていない。その時の眼鏡は上が黒で下がクリーム色の日本の学生が誰でも掛けていたものだ。お洒落でないので、ほとんど変化なく黒が少し赤っぽくなったくらいで30歳まで同じ様な眼鏡をかけていた。眼鏡に対して関心も希望もなかった。

 それが30年ほど前、師と仰ぐ漫画家のNさんにお会いした時、エンジ色の丸い眼鏡を掛けていた。
Nさんはハンサムでカッコよく、いつも洒落た眼鏡をかけている。その時は丸い眼鏡だ。
img 「その眼鏡いいですね、どこで求めたのですか」と聞くと祖母のものだという。家を整理していたら出てきたので、掛けているということだった。金物の細いツルが付いていて枠が濃い赤の漆で丸いのがよく似合っていた。
 私は自分の顔をかえりみず、この丸い眼鏡が欲しくなって探そうと思った。そして旅に出るごとに眼鏡屋に寄ることを義務づけた。足で探し回ったのだ。Nさんのイメージが強かったのだろうが、なかなかそんな形は見つからない。祖母のものなら明治か大正時代のものだろう。

 その後何年かしてその漫画家に会うと、あの眼鏡をやめて別の洋風のものに変わっていた。「あの丸い眼鏡はどうしましたか」と聞くと古いのでビスが壊れ、ダメになったということだった。やはり古いものは風情があっていいのだが、今の時代には部品が持たないのだろう。そして変わりの材料もないだろうと赤い丸い眼鏡はあきらめた。
 それからしばらくして落語家の桂文珍さんが丸い眼鏡を掛けてテレビに映っていた。それを見て「この丸い眼鏡だ!」とテレビに叫んだ。それは丸に黒と黄色の縞柄になっている。つまり虎柄なのだ。この眼鏡が欲しい。それから眼鏡探しが再び始まった。前の眼鏡は赤縁だったが、今回は虎柄だ。求める
ものが違うので、また一から歩き出した。

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