私が初めて中国の篆刻家の作品で感銘を受けたのは、斎白石でも呉昌碩でもない。王 さんという人で、当時北京中央美術学院の教授だった。その篆刻は、伝統的なものと違って文字学を造形的に変化させていて、軽味の中に文学が動き踊っているように見えた。
そして数十年後の現代。この王さんの流れを汲む人も多く現れた。それらを見ると、篆刻にも新しい歴史が動いているようで嬉しい。
最近の篆刻の流れの特徴は、石のまわりの枠を外す所にあるのではないか。枠を取るというだけで、随分印象が違ってくる。私も枠なしの印を彫ってみた。やはり軽さが出るのは仕方ないが、押すものによっては新鮮だ。こうして表現によって印も変化していく。時代はそれを求めているのかもしれない。 |