時間と刃物
──職人と手道具との対話
土田 昇・著
いまなぜ「職人」なのか!?
「人間と道具との交歓などという愚行が、唯一許されるであろう地点は、人間もまた、永遠性からはほど遠い存在であるという自覚にもとづいた姿勢によってしか得られないのです……」(本文より)。
卓越した名工・伝統工具との邂逅によって培われたまなざし──透徹した精神が躍動する〈人と物の関係を探求する哲学エッセイ〉。
【目次】
- 口絵
- 大突ノミ 国弘 作
鉋 重房 作
玄能 長谷川幸三郎 作
横挽鋸 十五代仲谷久作 作
仕上砥石 京都梅ヶ畑中山
造作作里 刃…嶋村清忠 作 台…谷澤甲太郎 作
大入ノミ 千代鶴是秀 作
手斧 栄 作
墨壺 大丸福蔵 作
切出 千代鶴是秀 作 [写真:秋山実]
- はじめに
- Ⅰ──道具は何を語りかけてくるのか
- 指跡/接点/厚いとか薄いとか/華やかさと地味さ/周辺
- Ⅱ──道具にどう語らせるべきなのか
- 足運び/まなざし/屑/場面/鉄色/樫材/不安定な木と道具の精度/密度について/明暗/錐の柄すげ/野性の交歓/ボタモチ
- Ⅲ──職人は道具に対して何を語るのか
- 線上/石/心がけ/変形/特殊な分野/薄物/表記/あいのこ/選択する/単調・変調/朝夕
- Ⅳ──沈黙へ
- 最期/曖昧な銘/時間と刃物/立場と仕事場/手の延長/姿勢/朝飯前/世代(その1)/世代(その2)/世代(その3)/世代(その4)/老いるのみ/身を削る/恥ずかしがり屋
- あとがき
【プロフィール】
土田 昇(つちだ・のぼる)
1962年東京生まれ。土田刃物店 店主。父・土田一郎氏より引き継いだ千代鶴是秀作品の研究家であるとともに、木工手道具全般の目立て、研ぎ、すげ込み等を行う技術者でもある。近年、伝統木工具の目利きとして、テレビ東京系列「開運 なんでも鑑定団」で名工の作品を鑑定している。竹中工務店・竹中大工道具館における展示・研究協力のほか、朝日カルチャーセンターをはじめ全国の手道具、木工具団体に講師として招聘されている。主な著書に『千代鶴是秀──日本の手道具文化を体現する鍛冶の作品と生涯』『千代鶴是秀写真集1・2』(以上、写真・秋山実、ワールドフォトプレス)、共著に『鉋大全』『大工道具・砥石と研ぎの技法』『鉋と技と銘品大全』『鑿大全』『鋸・墨壺大全』(以上、誠文堂新光社)などがある。