小尾修画集 痕跡
この世界は敬意を払うべき美しさに満ちている──。
油彩画の古典技法をベースに“現代の写実絵画”を探求し続ける小尾修。
技巧冴え渡るその作品世界は、息をのむほどの迫真性を帯び、
その場に居合わせるような臨場感を伴う。
本書は、情熱ほとばしる初期作から、新境地のオイルスケッチまで、
小尾修の果敢な企てを記録した初画集である。
(『小尾修画集 痕跡』帯文より)
写実絵画の求道者、ついに動く。
昨今、巻き起こった“写実画ブーム”の中で、画集の刊行を長く待たれていたのが、写実画家・小尾修です。
小尾修は写実業界においても屈指の技量の持ち主です。魅力的な女性像はもちろん、何気ない日常を作品に昇華させるその技巧は、油彩画の古典技法研究と実直な制作姿勢に裏打ちされており、目の肥えた写実ファンを唸らせ、同業の写実画家たちからも一目置かれる折り紙付きです。
そのため、多くのファンから待望された小尾の画集ですが、カタログ然とした内容は目指しませんでした。もちろん、丁寧に色再現を試みたおよそ105点の作品(ドローイング含む)は一点一点が見どころですが、それ以外にも制作風景やアトリエの写真、画家自身の言葉による葛藤の吐露や作品解説などを要所に散りばめるなど、さまざまなアプローチから小尾作品の魅力に迫りました。
これまでにない“写実画集”をご覧にいれます。
【本書の見どころ】
目を見張る女性像がズラリ!
前半では、小尾修のメインテーマの一つ「女性像」を紹介。ただ美しいだけではない、長い時間をかけて対象の存在に肉薄する写実画ならではの魅力をお目にかけます。
関心を読み解く!
中盤からは、小尾修の作品遍歴と制作のモチベーションを7つのテーマに区分け。モチーフや画材、画肌、構成、ヨーロッパ、アトリエ、そして新技法など、制作に欠かせないテーマが小尾の作品に与えた影響を浮き彫りにします。
現場に立ち会う!
制作過程やアトリエの様子など多数の写真を組み入れています。画家しか知り得ないスリリングな現場と、画家自身の言葉による解説で、作品だけではうかがい知れない制作の秘密に迫ります。
細部に肉薄する!
“写実の凄み”を肌で感じる作品クローズアップは異例の26点! 写実画の醍醐味である細部に渡る描きこみ、そして意外なほど荒々しい筆致も。写真とは次元の違う油絵具の物質性を感じてください。
写実画界のレジェンド・野田弘志が解説!
「小尾修の写実画は何が凄いのか!?」写実画界の精神的支柱でもある画家・野田弘志が、小尾修の写実画に宿る「創造の精神」を読み解きます。
【目次】
日常に潜む“宝物”
跡 ─ものに刻まれた痕跡
絵具がものになりきるまで
空間の奥行き、絵画の平面性
ヨーロッパとの対話
アトリエ ─作品の生まれる場所
オイルスケッチという可能性
寄稿◎野田弘志「小尾修 その創造の精神」
【プロフィール】
小尾修(おび・おさむ)写実画家
1965 神奈川県生まれ
1990 武蔵野美術大学大学院造形研究科油絵コース終了
1991 セントラル美術館油絵大賞展大賞受賞
(東京セントラル美術館)
1999 白日会文部大臣奨励賞受賞
2004 第6回前田寛冶大賞展準大賞受賞(日本橋高島屋・倉吉美術館)
2006 白日会内閣総理大臣賞受賞
2010-2011 文化庁新進芸術家海外派遣制度研修員として1年間
パリにて研修
2014 存在の美学(伊達市噴火湾文化研究所同人展)招待出品
武蔵野美術大学非常勤講師(2014年4月現在)