ぼくらの瀕死のデモクラシー
枝川公一・著
“自由”って、“平等”って、“民主主義”って、幻想なの?
敗戦によって日本にもたらされた「戦後民主主義」。 そこには“自由の国”アメリカによる「デモクラシー」の理想が塗り込められていました。 あれから半世紀以上──。
理想のメッキは既にはげ落ち、有史以来の困難に直面しています。 原発事故、政治崩壊、メディア不信、貧困層拡大、右傾化…… この不安の時代を生き抜くデモクラシーの真髄とはどのようなことなのでしょう?
とりわけ70~80年代、重要なアメリカ・レポートを書き続けてきた著者が、 円熟の視点で、民主主義と日本、デモクラシーとアメリカをみつめ、 一人ひとりが胸に抱くべき思想と、市民として行使すべき権利とは何かを語ります。
日常の一場面にもあらわれる民主主義の現場への鋭い目線は、はっとさせられることが少なくありません。 大人の読者はもちろん、平易な語り口で学生の「公民」「社会」などのサブテキストにも最適。 10代から読める、「民主主義」を知るための32篇を収録しました。
【目次】
- プロローグ
- 「民主主義の子ども」だった
- 1 憧憬のアメリカ
- アメリカは期待を裏切らなかった/パワーとしてのデモクラシー幻想/植えつけられた黒人への「偏見」
- 2 グローバリゼーションの罠
- インターネット・コミュニティの可能性/日本プロ野球の二十一世紀/自分の仕事を貶める人々/シリコン・ヴァレーの教訓/ミス・シロタが書いた人権条項/地域通貨をめぐる考察/お金が友愛の証しとなる日
- 3 9.11後の風景
- デモクラシーの寓話/国家への「忠誠の誓い」/市民の自由と安全を脅かす国家/夢の「市民銀行」構想/バラけはじめた国家/歩く自由を奪うクルマや自転車/自由のための所得税廃止論
- 4 瀕死のデモクラシー
- 瀕死のアメリカン・デモクラシー/形骸化する多数決/侵される内心の自由/タテマエに過ぎなくなった三権分立/遠ざかる真の代議制/ジャーナリストの自由と責任/「靖国」と「コロンブスの日」
- 5 デモクラシーの明日
- あるジャーナリストの失われた希望/前衛としての大道芸/原発と「ショック・ドクトリン」の恐怖/陪審員制度と裁判員制度 /「総司令官」オバマの宣戦布告/オバマのプラグマティズム/ジョン・ウィルコックがくれたもの
【プロフィール】
枝川公一(えだがわ・こういち)
ノンフィクション作家。1940年東京生まれ。東京外国語大学英米学科卒業。出版社勤務を経て作家活動に入る。主な著書に、『都市の歩き方』(北斗出版)、『ジョン・レノンを探して』(文藝春秋)、『サンフランシスコ旅の雑学ノート』(新潮文庫)、『ニューヨーク世紀末』(光文社)、『東京のBar』(プレジデント社)、『シリコン・ヴァレー物語』(中公新書)、『バーのある人生』(中公新書)、『これならわかる!ドラッカー思考』(PHP文庫)など著書多数。